シャン州をさまよった女流作家 曾焔の伝奇小説 断魂辣(魂が消し飛ぶ唐辛子) (2)

 
 続いて、お婆さんは籠の中からバナナの葉に包まれたものを引っ張り出してきた。そしてその包みを開いて中のものを見せてくれる。その中には、ぷりぷりに太って、肉厚で柔らかそうな、新鮮な木耳が入っていた。それも、ほとんどが白木耳であった。私はこれには大喜びし、すぐに全部の木耳を買い取ることにした。

 お婆さんは嬉しそうにその木耳の包みを一つずつ取り出して、玄関のたたきの上に置いた。そのとき、私は籠の中に紫がかった赤い色をした、何かの木の実のようなものを見つけた。宝塔のような形をしていて、大きさは小さい電池の大きさほどで、その色の美しさ、色澤の鮮やかさは、見る者をして、これは間違いなく美味であるに違いないと確信させるような姿なのである。この木の実のようなものは、ひと枝ひと枝を藤蔓でまとめてある。

 「これはなにかしら?」私はひと枝を手にとって眺め回しながら尋ねた。

 お婆さんはさっとそのひと枝を手に取ると、口を大きく開けて怪しげに笑い出した。彼女は自分の中国語では伝えきれないと判断したのであろうか、両手をばたばたとでたらめに振り回し、顔には眉をしかめて眼を細めるような表情を作り、堪えきれないような苦痛を表現している。そして、口をすぼめて息をすーふーすーふーと吸い、また、しゅっしゅっというような音を出した。続いて頭をかきむしって耳の穴に指を入れると、こんどは両足をばたつかせて跳ね回る動作をしている。目も鼻もこれに合わせて動かしている。

 私はこの動作を見て一目でわかった。彼女が言わんとしているのは、これがとてつもなく辛い唐辛子であるということであった。大いに誇張されているとはいえ、お婆さんの迫真に迫る演技は、あまりに滑稽で私は笑いが止まらなかったのであった。

 私が辛いものが大好きだということは、親族友人の誰しもが認めるところであったし、私はこの世のどんな辛いものでも敢えてそれに挑戦するつもりである。私の父は命の如く辛いものを愛する四川人であり、母もまた辛いものが命の貴州人である。

 そしてこの私はといえば、これまた辛いものを嗜むことに命をかける雲南に生まれ育っているので、辛い物好きの中でもさらに輪を掛けた、無類の辛い物好きなのである。

 タイビルマ地域ではもっとも辛いとされる小粒の唐辛子や、インド原産の櫻桃型の唐辛子、すべて我が家の食卓に上り、日常的に食されている。私が辛いものを食べるとき、辛いものが苦手な人たちはみな目を見張るほど驚かされるのである。もし、この世に辛いもの選手権のような競技があれば、私は間違いなく「唐辛子大王」の栄冠を手にするはずであり、しかも、それほど食べたとしても、私の身体には異変などあり得ないはずなのだ。

 だが、悔しいことに、今日初めてお目にかかるこの唐辛子は、私がかつてこれまで一度も食べたことがないし、また、この姿を見たことすらもなかったものなのだ。

 「これは唐辛子なんでしょ?」私はにこにこしながら聞いた。そしてお婆さんの籠の中からそれを全部取り出し、それをすべて買い取るべく準備していた。

 だが、お婆さんはそれを見るや、わあわあと叫んでそのすべての唐辛子を籠にしまい込んでしまった。

 「あら、売ってくれないの?」なぜなのかよくわからないのだが、私はがっかりしながらそう言った。


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