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シャン州をさまよった女流作家 曾焔の伝奇小説 ジャーディーと彼の娘 (9)


 私はだらしなく笑ってこの話題を正面から受け止めることを避けるしかなかった。私は彼女を書斎に連れて行き、来客用のベットに彼女を寝かせた。

 ブーはベッドに横たわり、その黒くて大きな瞳をしっかと見開いて、私の答えを期待しながら待ちわびているようだった。

 しかし、私には力強く慰めてあげることぐらいしかできないのであった。

「いいわねブー。まずはとにかくよく眠るのよ。それから、お昼は外に出ちゃだめよ。銭家の人はあなたがここにいることを知らないから、ここにいれば見つかりっこないわ」

 ブーは私に疑いの混じったような眼差しを向けた。これは言い訳なのか、それとも承諾なのか。彼女はまだ私の言っている意味を理解していないようであった。

 彼女は私を注視していたが、信頼の意を込めて私を一瞥して微笑んでいる。この笑顔には、自分の弱さを痛感させられた。気まずさに耳まで赤くなり、自分自身がまるで人を騙しているかのような気持ちになっていった。

 しかし、ブーの表情には希望が甦ってきている。その平和な笑顔のまま眼を閉じて、さらにそのまま眠りについたようであった。

 今日一日の出来事で、ブーはもうだいぶ疲れ果てていたようであった。鞭打たれ、追い立てられ、そして、冷たい雨を冒して我が家まで逃げ込んできていたのだ。この可哀想なアカ族の娘……。

 私は何があろうと、まずはとにかくこの子を我が家に住まわせてあげようと心に決めた。何日いられるかはわからないが、できるだけ、何日でもである。これはまったく消極的な方法としか言いようがないが、この方法以外、残念ながら、私にはこれ以上の良策は思いつかないのであった。

 だがしかし、翌日の午前の授業を終えて学校から戻ると、私の知らぬ間に銭家の人間が人をよこしてブーを連れ去っていったあとだった。お隣の|字《ズー》さんの奥さんが教えてくれた。銭家の人間は一軒一軒しらみつぶしにブーの居所を聞き回っていたそうだ。その上、彼らがブーを連れて行くときには、聞き捨てならない悪口雑言を喚き散らしたらしい。他人のことに首を突っ込むな、などというのはまだましで、さらには、他家が買い取ったアカ族の子供を誘拐して匿うぐらいなら、自分で金を払って一人買ってくればよい……、などと言い残していったらしいのである。

 当然私はひどく憤ったし、さらに可哀想なブーのためにも悔しさであぶら汗が出てきた。

 まったく道理が通じず、ただひたすら横車を押すだけの人間たちに対しては、言うべき言葉も見つからない。ただ、自らが墓穴を掘るのを待つ以外に、私たちにはなす術がないのであった。

 それから一月以上が過ぎたある夕方のことであった。ジャーディーが突然やってきて、我が家の庭に音も立てずに入ってきた。そして、すっかり落胆しきった様子で、我が家の玄関のたたきにべたりと座り込んでしまった。

 私が出て行って様子を見てみると、彼の両頬がえらく凹んでいるのが見えた。もともとその少々角張った顔が長く伸びたように見え、両眼には力がまるで入っておらず、明らかに動きが止まってしまっているし、反応も鈍くなっている。あの、見た者に憐れみの情を起こさせずにはおかない笑顔も、今日はまるで見せてくれないのであった。



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