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克保(柏楊) 異域 (4)

 
 復興部隊の組織編成と訓練が完成したころ、我々はすでに三千名近くまで拡充していた。これは主として、「|馬幇《マーバン》」華僑の功によるところが大きい。

 さて、この「馬幇」という聞き慣れない存在については、おそらく説明を要すると思う。彼らのおかげで、孤軍の勢力は成長、拡大していくことができたわけだが、もし彼らがいなければ、我々は発展するどころか、ただ逃げ回るだけの存在であったことだろう。

 清朝中期、馬幇はすでに存在していた。雲南辺境一帯の貧しい農民たちは、生き延びるために、一匹か二匹の馬を連れ、集団を作って密林を往来していた、おそらく、我々孤軍よりも大変であったろう。彼らは山を越えて、ラオス北部やビルマ北部の山地に、「|貨郎《フォラン》」と呼ばれる小さな商店を経営していた。

 彼らが取り扱う品物は、薬材、英国製の布地、さらには阿片まであった。抗日戦のころになると、それらに加えて武器弾薬まで販売するようになった。目を閉じて、アメリカ映画に出てくる西部開拓者たちの面持ちを思い浮かべてみてほしい。それはそのまま彼らの輪郭を形作ることだろう。馬に乗って山々を駆け、両手で銃を撃ち、酒杯を掲げて歌う。悲壮な感じもするが義には厚い、草の根の英雄たちである。

 彼らは山の中に生活の基盤を築いていても、妻たちの大多数は白夷人女性である。しかし、彼らは国を愛して家を想い、慷慨心にあふれているなど、依然、百年前の遺風を残している。すべての馬幇華僑の人数を合わせると四、五万人はいると思われる。

 彼らは我々に医薬品や弾丸、馬匹も援助してくれた。甚だしくは、|馬守一《マーショウイー》大隊長を頭として、山や峰を平地のように越えてゆく力強い子弟たちが、馬や銃を自ら持ち込んで我々の隊伍に加わった。こうしたことがあってから、我々はただビルマ辺境で生きるだけではなく、根を下ろし始めるのである。

 復興部隊は小猛捧の、とある教会で設立された。私ははっきり覚えている。教会前の広場で青天白日旗を掲揚したときのことである。衛兵以外の我々全員、家族たちもみな参加していたが、号令の中で、国旗がするするとポールにそって掲揚されていく。

 サルウィン河の川面から昇り立つ朝霧から陽の光が差し込み、国旗を照らし出した。家族たちは黙してじっと眺め、子供たちは敬礼していた。誰かが啜り泣くのが聞こえたかと思うと、そのあと、広場中が感涙にむせんだ。国旗よ、我々を見守っていてくれ、我々はあなたの足元にまた立つことができた。

 李國輝将軍の長男|李競成《リージンチェン》は、今年で十二歳になったはずだ。彼は小猛捧で生まれた。李夫人である|唐輿鳳《タンユーフォン》女史は私の妻の親友である。彼女は妊娠八、九ヶ月の身重でありながら、敗軍とともに千山万水を越えてきた。ともに撤退してきた家族たちにとって、彼女は姉貴的存在である。

 そう、みなさんにも教えておきたいことがある。赤チン以外にどんな薬もない我々の衛生隊が、混乱の中で誕生した。そして、小猛捧での一ヶ月の休養中、我々の状況は安定してきていた。

 そのころ、我々は台北と連絡が取れるようになった。我々は輸送機からの空中投下による補給を要請したが、答えは、自分たちで考えて何とかせよ、であった。我々は飢え死にしないためには仕方なく、山麓を開墾して屯田するしかなかった。さらに、武器弾薬を手に入れるため、現在の訓練が完成した後、雲南に取って返し、共産党軍から奪い取る計画を立てた。

 しかし、天は我々に安んじたわずかな時すらも与えてはくれなかった。ビルマ政府は、我々が内に糧なく、外に草なしという状況で、孤立無援状況であることを偵知した。彼らは我々の二倍の兵力を出動させて、我々を攻撃してきた。こうして我々は、ビルマ領内での一連の戦闘につながる、一回目の戦闘を展開せざるを得なくなってしまった。

 もったくもって、何といったらよいのだろうか。虎口を出れば狼の群れ。永遠に休まることがないのであった。




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