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シャン州をさまよった女流作家 曾焔の伝奇小説 癩蛤蟆精(イボガエルの精)(4)

 
 私は言われるがままに彼女と共に数歩走ったが、彼女の手を振り解いて、また同じ場所に戻ってきて「急いで逃げることなんかないわ。ただの一匹の白蛇よ。私はこんなに真っ白な白蛇を見たことがないわ。ねえ、あなたはこの白蛇がとても美しいとは思わないの?ねえ、もう一度あそこに戻ってあの蛇を捕まえましょうよ」
 「あなた気でも狂ったの?あの蛇は毒蛇じゃないの。なんで捕まえるのよ。おかしいわよあなた。どうして毒蛇を捕まえようなんて言うのよ」彼女は笑っていた。
 「あら、あなた知らないの?一昨日の新聞の記事に載ってたじゃない。台湾で白蛇を捕まえた人がいて、買い手が三百万元を提示したけど、彼は売らなかったって。もしあの蛇を捕まえたら、私たちも大金持ちになれるかもしれないわよ」冗談交じりに彼女にそう言った。

 彼女はひとしきり驚くと、こんどは笑いながら言う。「じゃあ、もう一回見に行きましょうよ。もしかしたら本当にあの蛇を捕まえられるかもしれないから。小さな白蛇はすごく珍しいし、確かにとてもきれいだと思うわよ」

 私たちはおそるおそる、半分は怖がり、半分は興奮しつつ、先ほどの木の枝の下に戻ってきて、注意深く辺りを見回したが、あの細い蛇はもういなくなっていた。

 二日目の朝、私が家の台所に行くと、一目であの蛇とわかる白い蛇がガスコンロの上の醤油瓶の上にとぐろを巻いていた。

 白蛇はそっと頭をもたげると、私の方を見ているようだった。口からは、紫色の舌が出たり入ったりしている。
 この繊細な白蛇はなにやら神がかって見える。この白蛇を手の上に捧げ持って遊んだりできないだろうか。それに、この白蛇は白蛇伝の伝説を思い起こさせる。だが、私は主人公の白娘娘の真の姿も、彼女の頭の形が三角張っているのかも知らないのであった。

 この心温まるような優雅で美しい小さな命、そしてその火の如く赤い眼は、大いなる霊性を感じさせ、私には、夫の楊林を呼んでこの白蛇を叩き殺すことなど、とてもできなかったのであった。

 そしてこの白蛇は、私の姑息な軟弱さを見透かしていたのであろう。すっかりご満悦の様子でその場所にとぐろを巻いたまま、動こうとする意思すら一向に感じさせないのであった。

 だがやはり、白蛇がぺろぺろと出しては引っ込めるあの舌だけは、人間に本能的な憎悪を抱かせるものである。たとえその容貌が言葉にできないほど美しいものであったとしても、また、非常におとなしい白蛇であったとしても、毒蛇である以上、危険と不安は打ち消せないのである。この白蛇は頭が三角張っていて、猛毒を持っていることが明らかなのに、どうして私がのこのこと台所に入っていって、白蛇と一緒に煮炊きなどできようか。

 冷静に考えれば、この白蛇を捕まえるのはとてもではないが私の手に余る。結局夫の楊林を呼んでくるしかないのであった。
 「楊林、叩き殺しちゃだめよ、そこから追い払うだけでいいの」私は馬鹿なことを言ってしまった。
 夫の楊林は私の方を向いて一言言った。「お前は気でも狂ったのか。毒蛇にまで同情するなど考えられないぞ。まさか、この白蛇を飼いたいなんて言い出さないだろうな」

 彼はそう言いながらドアの方へ行って火挟みを取ってくると、ガスコンロの上の白蛇を探している。
 醤油瓶の上にいた白蛇はすでに姿を消している。あのずるがしこい白蛇はきっと、すでに余裕たっぷりでどこかへ逃げ去ったに違いない。

 私はそのとき突然あることに気付いて、いつの間にか心が暗い影に覆われた。私はすでに同じ白蛇を二度も見ているではないか。これはもしや偶然なのかそれとも…。

 三度目にこの不思議な白蛇を見かけたときには、すでにこれが偶然であるとはとても思えなくなっていた。
 高おばさんの話はすでにそのとおりとなっているのではないか。
 そして、それは七日目の最後の一日に起こった。私は学校の便所の近くで、またしてもこの白蛇を見かけたのである。

 白蛇はその細長い身体を安心しきったように、門の下のところの、あまり人目に付かない場所にへばりつくようにだらりと身体を伸ばしていた。白蛇がこのように隠れているということは、この白蛇はこうして潜伏しながら、人間に噛みつく機会を窺っているのではないか。私は本能的にそう感じた。

 だがよく見ると、白蛇は頭隠して尻隠さずのつたない醜態をさらしているだけのようにも見える。しかしその内面には、つたないその醜態からは想像も付かないような恐ろしく危険な意図を秘めているのだ。私は声を失いそうになりながらも、ありったけの声で叫んでいた。「蛇よ!ここに蛇がいる!」

 私の叫び声は、草地で嬉嬉として遊んでいた学生たちを驚かせた。彼らは手当たり次第に石ころや棒を拾って駆け寄ってきた。

 あのずるがしこい毒白蛇は、投げつけられた石ころを機敏に避けると、そそくさと草むらに逃げ込み、瞬く間に行方をくらましてしまった。

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