【柏楊 金三角 邊区 荒城】 作品のあらすじ

 
 台湾の著名な作家柏楊は、新聞社から連載の仕事を打診された。かつて自らの作品「異域」で描いた国民党孤軍の末裔たちと、そして、黄金の三角地帯も取材してみてはどうかという申し出である。いままで外国人が著した関連著作に飽き足らなかった柏楊は、この問題には、中国人にこそ見抜ける本質があると考え、この仕事を引き受けたのだった。

 しかし、柏楊はこの取材に出発する前から、そして現地到着後も、さまざまな障害に見舞われてしまう。それは主に、麻薬王クンサーがタイ国内に維持していた拠点バーンヒンテークをタイ軍が攻撃したからだった。柏楊はそれでも取材を続けていく。

 黄金の三角地帯が形成されてきた過去のいきさつとは何か。そもそも、どうしてアジアにこれほど多くの阿片が存在することになったのか。柏楊の問いはここから始まる。そして、阿片戦争やインドシナ戦争にまで遡って検証し、次第に黄金の三角地帯へと帰結していく核心へと迫っていく。そして、因果関係から見て、近代史の阿片戦争を第一次とするならば、この攻撃はつまり、第二次阿片戦争であると言いきるのである。

 もとはといえば、阿片は西洋人がアジアに持ち込んだ阿片が、やがてアジアでの生産量が急増し、それが反対に西洋へ持ち込まれて西洋人を苦しめている。しかし、歴史的に見て、生産量を急増させたのも西洋人である。つまり、第二次阿片戦争とは、西洋人が自らまいた種を刈り取る作業に、タイ政府が迎合した結果にすぎないのだと喝破する。

 当時タイで起きていた一連の事件は、これらすべてと互いに微妙に絡み合っている。当時のタイ政府と麻薬の関係、タイ政府によるクンサー根拠地攻撃の裏側、タイ国内における華僑問題、タイ政治の黒幕プレム首相の登場とその際の政権交代劇、北タイ、東北タイへの共産主義勢力の浸透など、当時のタイの世相を 示す多くの事件と、それらに関連する論考を、国民党末裔たちの北タイ定住への苦悩とともに描き、解き明かしていく。

全42話のタイトルとリード一覧

一、出発
「南タイには間諜の網がびっしりと張り巡らされ、北タイにはいつでも殺し屋が待ち構えている。いかなる助けも得られないが、それでも辛抱して前に進まなけ ればならない。人、生きて時あり死して地あり」
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二、麻薬の三角地帯
「黄金の三角地帯の麻薬生産量は、全世界の生産量の七十五パーセント。それを取り締まる輩は、結局麻薬密売の大物の金儲けを助けていることになる」

三、麻薬王朝
「羅星漢(ローシンハン)。ビルマ領内のコーカン地区を根城とするこの一匹狼は、環境劣悪、台湾の四倍の僻地に麻薬王朝を開いた」
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四、クンサーの逮捕と救出
「二つの銃口が素早く二人のソ連人医師の背後に立ち、映画の誘拐シーンのように彼らを人質にした」
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五、バーンヒンテーク
「この詩的な名前の小さな村で、クンサーは自分を除くいかなる人間にも、ここでの好き勝手を許さなかった」
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六、払暁の攻撃
「どちらが先に発砲したかはもはや重要ではない。重要なのは、一発の銃声で戦闘が発生したことである」
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七、三つの反撃
「クンサーは中国語のビラを撒き、タイ政府に謝罪と賠償を要求。拒絶すればさらに大きな衝突につながると宣言」
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八、和談
「鳴り物入りの軍事行動は、轟轟と始まり、揉み消されるように終息した」
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九、歴史を遡る
「十九世紀初頭、中国はすでに阿片がはびこる世界であった。中国人は台に横たわり、山犬のように痩せ細っていた。これは一つの悲劇的な情景と言わざるを得ない」

十、中国を直撃する麻薬の波
「これは残酷な貿易である。無知蒙昧な中国人に阿片を売りつけ、中毒にし、搾り取り、困窮させた」

十一、第一次阿片戦争
「エリオットは中国に無罪を主張することはなく、代わりに最後通牒を突き付けた。返答がなければ、即、攻撃に移る」

十二、奇異な結末
「驚天動地の大戦争は阿片の販売に端を発していた。しかし、終結するころには誰も阿片を取り上げなくなっていた」

十三、阿片の二大供給国
「フランスは阿片貿易に頼って植民地経営をしていた。アメリカは介入後、やはり阿片取引を行った」
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十四、自業自得
「黄金の三角地帯は後半戦だ。一九六○年代になってから麻薬の世界にデビューする。やがて、麻薬は西洋へと逆流し始める」
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十五、少数民族
「麻薬王たちの武装集団であれ、「異域」孤軍末裔たちの自衛隊であれ、少数民族がその戦闘の主力である」
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十六、第二次阿片戦争
「一連の銃声が鳴り響き、二人の父子は馬から倒れ落ちた。アメリカ人はそのブラックリストが実在することを深く信じざるを得なくなった」
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十七、落としどころ
「タイ政府は一度大きく虚勢を張って、あとは何事もなかったかのようにしているが、そこには隠された一面と厳しい一面の苦しみがある」
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十八、危険な趨勢
「麻薬王朝が輸出港を必要としている以上、ある日バーンヒンテークがタイ軍の手に落ちれば、またある日、新しい別な戦争が始まるであろう」
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十九、一つの陰謀
「野心家の政治屋が、故意に中国人と麻薬王、そしてシャン州革命軍と「異域」孤軍を一つにしようとしている」

二十、一つの信号
「独裁国家において、この信号が上がったあとは虐殺が始まる。タイは民主国家といえども、同じような結末が待っているのではないだろうか」

二十一、孤軍の危機
「中国人でさえこうした誤解をするならば、タイ人なら尚更混同しているはずだ。これこそがいまタイ北部にいる孤軍末裔たちが向き合っている危機とはいえまいか」
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二十二、クリアンサック大将の挽回
「現在は国民民主党の党首であるタイの前内閣総理大臣は、身をもって孤軍の潔白を保証した」
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二十三、武装基地と難民村
「孤軍の拠点は夜空の星のように北タイに散らばり、地域の安定にとっても重石となっているのである」
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二十四、奇異なる九十三師団
「抗日戦末期、中国遠征軍九十三師団はかつて北タイに入ったこともある。現在は、タイという土地に体を借りて魂を吹き込み、孤軍が九十三師団を名乗る」
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二十五、メサロン(メーサロン・美斯樂)
「塞下秋来風景異、四面泣聲連角起。千嶂裡、長煙落日孤城閉。(※訳注、宋代、范仲淹の漁家傲の詩からの引用。塞下には秋が來て風景は異なる。四面から邊聲が連角に起こり、千嶂の裡、長煙は落日に孤城を閉ざす)」
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二十六、孤軍の悪運
「孤軍が傷を舐めて癒し始めたのもつかの間、やっとひと息ついたその時、タイ政府は孤軍に二者択一を迫った。タイを出ていくか、それとも武装を解除するか」
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二十七、武装解除
「銃を手にしたその時、孤軍たちは思わずにはいられなかった。一度銃がこの手を離れたら、それはそのまま永遠の別れとなる。彼らは英雄として最期の涙を流した。」
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二十八、苦難は尽きず果てしなく続く
「武装解除後、孤軍はまるで全軍が殺されるのを待っているようなものであった。辛うじて生き延びているときに、タイ政府は第二回の武器引き渡しを命令してきた」
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二十九、パータン戦役
「孤軍の前には虎狼、後ろには何万尺もの崖に切り立った細道、一歩下がればそれは即、死を意味した」
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三十、○四指揮部
「孤軍は環境劣悪なタイビルマ国境地帯を落ち葉のように漂い続けること二十年。いま、彼らは自らの血と交換に、一握りの土地を手に入れ、やっと安んじて根付き始めることができたのであった」
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三十一、羅星漢の隠された秘密
「中国人と華人は分けて考えなければならない。他の国に住む骨肉の同胞のためにも、厄介事を増やしてはならないのである。我々は彼らを助けることができないだけでじゅうぶん悔しい思いをしているのだから、さらに彼らを害するようなことは慎むべきであろう」

三十二、老兵の死(段希文将軍の死)
「段希文将軍は毀誉褒貶いろいろあれど、その仕事に任ずること二十年におよぶ。老兵終に死す。孤軍の第三軍と第五軍はまとまりを失って遊離している。これでは、まもなく発生するカオヤイ山の戦闘にいかにして向き合うのか」
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三十三、タイの脊椎を断つ
「タイ共産党は鉄道の切断を準備している。一旦切断されれば、タイの中南部は難民の渦に呑み込まれてしまうであろう。バンコクは第二のサイゴンになってしまう」
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三十四、カオヤイ山戦役
「タイの地元紙は紙面を大きくとって報道した。これは証拠である。タイのニュース業界が、孤軍のために発表してくれた公開の証拠である」
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三十五、苦悶と、茫然と
「未成功に終った反乱は、この三十年来で孤軍をもっとも震撼させた出来事であった。楊維綱将軍は包囲を突破して逃走、人々を扼腕させた」

三十六、うらぶれたうしろ姿
「この三十年、孤軍が何度も聞かされた励ましと約束は、彼らが何も信じられなくしてしまった。原始的な生活は世間の騒ぎとは無縁であったが、同時に、なにがあっても受け入れる以外、彼らには何もできないのであった」

三十七、四つの誓い
「彼らを愛するならば、我々は落ち着いて彼らの誓いを支持し、さらに、その誓いが実践されるよう、彼らを励ましていくべきだ」
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三十八、文化の砂漠
「教育図書の不足によって、孤軍末裔たちの思想、意識は、驚くべき速度で祖国から離れていこうとしており、やがて、タイという宇宙の中に消失してしまうだろう」
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三十九、次の世代を救え
「孤軍の中国文化を断絶させようとしているのは、まさしく中国文化特有の新型官僚主義である。我々にはそれを改める能力もなく、ただ嘆息をつくばかりである」

四十、いくつかの問題と討論
一、バーンヒンテークで殺害された父子とは一体誰か。
二、コーカンに関するいくばくかの話
三、歴史の検討「南詔王族はタイ民族であるか」

四十一、女流作家曾焔
「彼女は何も分からない幼い子供二人を連れて、三つの道が交わるパーサンに住んでいる。すでにバーンヒンテークには戻れないし、メサロン(メーサロン)にも戻れない。一人の才女は寄る辺もなく彷徨っている」
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四十二、荒山の別れ
「最後の一人の中泰難民支援服務団団員が引き上げるとき、傷痍軍人たちは列をなして彼を見送った。突然、彼らは身を乗り出して彼に抱きつき、子供のように声をあげて号泣した」
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四十三、帰還、祝福
「私は本編を書き終えたときに思った。叢山にいる骨肉の同胞たちに、無限の祝福を贈りたい。涙を孕んだ祝福を」






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中国語で書かれた作品から、北タイやビルマ(ミャンマー)シャン州、黄金の三角地帯(ゴールデントライアングル)の歴史や風物を読み解いていきます。
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