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霊犬蒙迷科(霊犬マウンミークー)(12)最終回



 マウンミークーはなおも唸り続け。そして、その牙は王興財の手にずっと噛み付いて放さない。王興財はあまりの痛みに声を上げ、拳銃を床に落とした。

 父はすかさずその拳銃を拾い上げ、弟を引き寄せた。主人に忠実なマウンミークーの機知のおかげで、一瞬の間に形勢が逆転したのであった。

 マウンミークーはまだ王興財に勇敢に噛み付き続けていた。王興財も抵抗しているが、もはや反撃の余地はそれほど残されていないように思われた。彼の太腿を始め、体中に、噛み千切られてできた穴が開いていて、そこから吹き出した血が衣服を赤く染めている。彼はあまりの痛みに、まるで屠殺される豚のような叫び声を上げている。

 父はマウンミークーを引き止め、拳銃の照準を王興財に合わせたまま、王興財に言い聞かせるように言った。

「自業自得だ。我々親子は生き延びるべくして生き延びるの。これこそが因果応報というものだ」

 王興財は膝をがっくりと落として跪き、必死に命乞いをしている。

「王さんよ。安心しろ。私は命まで奪いやしない。殺人などという行為を試してみたいとは思わないのでな。血がこびりついた手ではこの先不便だろう。だがな、お前さんには一晩ここに泊まってもらわなければならない」

 父が私に衣服を干すために張ってある縄をほどいてくるように言った。そして王興財を柱にきっちりと縛り付けた。朝が来て、もし近所のカチン族が通りかかことがあれば、或いは彼は助かるかもしれない。強盗という許しがたい罪を犯したこの男に対してならば、この程度の罰など、決して重いものだとは思われない。

 マウンミークーは伏せながら、荒い息をぜいぜい言わせている。流れ出た血が、まるで大きな池のようになっている。私は弟と一緒に包帯や薬を取り出してきて、マウンミークーの手当てをした。

 父が歩み寄ってきて、マウンミークーを優しく撫でながら、溜息混じりに言った。

「もしマウンミークーがいなかったら、我々親子三人、今晩この掘っ立て小屋で死んでいたところだ」

そして、王興財の方へ向き直り、

「おい、王さんよ。財物というものは、手に入れるにも人の道というものがあるんだ。その道理を守っていれば、天もまた守ってくれる。だが、もし人の道に背くような方法で手に入れようなどと考えていると、遅かれ早かれ、その財物のために命を落とすことになるんだ!」

と、教訓を垂れるように言った。

 マウンミークーの止血をしながら荷物をまとめ終えた。父は背嚢を背負い、私達はマウンミークーを連れて、夜のうちにこの掘っ立て小屋を離れる。

 それなりの距離を歩いたと思う。マウンミークーは、受けた傷の出血が多すぎたのか、いよいよ耐え切れなくなり、ついにばたりと倒れてしまった。力なく地面に横たわり、その眼には力なく、悲しんでいるようにも見える。まるで、もうすぐ私達が永遠に別れなければならないこと、そしてその悲しさをも、すでに悟っているかのようであった。

 私と弟は堪え切れなくなって、ついに泣きだしてしまった。父は毛布を取り出すと、広げてマウンミークーをやさしく包み、そのまま抱きかかえてさらに歩き続けた。

 だが、この道のりはとても厳しく、私達は負傷して弱っているマウンミークーを、とあるカチン族の家に預けるしかなかった。父は幾ばくかの金を渡して、何度も何度もマウンミークーの世話を頼み、その上、また数日後に戻ってきて連れて行くから、とも申し添えておいた。こうしておけば、彼らがマウンミークーを粗末に扱うことはあるまい。

 やがて私達は無事国境を超えて、タイの領内に入った。その後も、私と弟は、ビルマから下りてくる人たちを見つけると声をかけ、マウンミークーが消息を尋ね歩いた。

 そして七、八年の歳月が過ぎていった。マウンミークーにそっくりな犬を見かけると、私達はマウンミークーのことを思い出すのだった。

 彼はただの犬ではなかった。私達に永遠の情誼と思い出を思い出させる特別な犬である。

 マウンミークー。どこにいるのだろう?いまでもどこかで元気に暮らしているのだろうか。

(「霊犬 マウンミークー」 了)

霊犬蒙迷科(霊犬マウンミークー)

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