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霊犬蒙迷科(霊犬マウンミークー)(11)



 果たして、王興財たちは、弟を引きずり出してきて、腰の拳銃を抜き、弟の背中に銃口を合わせた。

 弟はあまりの怖さに顔面が蒼白になっている。私も驚いて父の懐に逃げ込んだ。この小さな掘っ立て小屋の中の、ほんの僅かしかない空気が、緊張しているのがわかる。

「陳さん、隠しごとはなしにしようじゃないか。さあ、ブツをこっちに渡してもらおうか。でなきゃ、あんたのこのガキとその娘、それにあんたも、この掘っ立て小屋から生きて出られると思わないほうがいい」

王興財は不敵な笑いを浮かべながらそう言った。

 一瞬、父の体から力がすっかり抜けてしまったが、すぐに気を取り直して王興財に怒鳴り返した。

「この恥知らずめ!子供を脅すことはない、石はあるだけすべて持っていけばいいだろう」

 ……すべて渡すって?

 私は慌てていたが、顔を上げて父の顔を覗った。父の顔は、怒りで痙攣し、歪んでいた。

「どうにかなるさ。ビルマの翡翠は神仏のご縁があって初めて手に入るものだ」

父はそう言いながら、私を自分の懐から離し、床下に放り込んであった背嚢を取りに行った。

 マウンミークーも異変に気気付いたのか、低い声で吠えている。

 父は背嚢を取り出すと、翡翠を隠すために上にかぶせてあった、いろいろな偽装を、一つ一つ取り除き始めた。

 王興財は貪欲さですっかりぎらついているその眼で、固唾を呑んで見つめている。

 弟はマウンミークーを見つめていたが、突然、あらん限りの力を振り絞り、大声で喚き立てた。

「黙れ、この糞ガキ!死にたいのか!!」

王興財は手にしていた拳銃で思いきり弟の頭を殴った。

 この騒ぎに、勘のいいマウンミークーが機敏に反応した。拳銃が握られた王興財の手に向かって跳びかかり、喰い千切らんばかりにその手に噛み付いたのだった。

 同時に銃声が響いた。その刹那、一発の銃弾がマウンミークーの下腹部を撃ちぬいて、土間の土にめり込んだ。血が銃創からどくどくと溢れ出てきて、マウンミークーの、あの灰色の体毛があっという間に真っ赤な大きな塊に変わっていった。



霊犬蒙迷科(霊犬マウンミークー)(12)最終回へ続く


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