霊犬蒙迷科(霊犬マウンミークー)(3)

 
 
 この子犬の姿は気が遠くなるほど可愛い。黒くてくりっとした小さな眼がきらりと光り、私たちをじっと見つめている。弟が牛乳を皿の上につぐと、子犬は舌を伸ばしてぴしゃぴしゃ音を立てて飲み始めた。とくに好き嫌いなくなんでも食べさせることができるようだ。

 私と弟は子犬を撫でてみた。毛に恐る恐る触れると、子犬は凶暴さを秘めた低いうなり声を上げた。その様子はまるで今にも私たちに咬みつきそうな勢いであった。私たちは恐れをなして、それでも子犬を気遣ってそっと子犬から離れた。

 しばらく経つと、私たちと子犬は徐々に打ち解け始めた。そして私たちはまず、この子犬にマウンミークーという名前を付けることにした。マウンとはビルマ語で弟を意味し、ミークーとは灰色を意味した。つまり、灰色ちゃんといったような意味である。

 マウンミークーは我が家に活気、喜び、そして勇気を連れてきたようでった。その後の歳月を思い起こしてみても、この犬がもたらしてくれたものによって、私たちは何度も難を逃れたのであった。私たちが今こうしてなんとかタイまでたどり着いて、快適な生活が送れるのも、間接的ではあるが、この犬のおかげといっていいだろう。

 ある日の夕刻、例によって父が仕事へと出掛けていき、私たちはマウンミークーと遊んでいた。

 私たちが一本のリボンを見つけてきて、マウンミークーの尻尾に結びつけると、ひたすらそのリボンを追い掛けてぐるぐると回る。そうしてぐるぐる回って最高に興に入るときは、倒れても倒れても、何度起き上がって飽きることなくそうして遊び続けるのであった。

 ときに、何度回ってもこのリボンを捕まえられないときは、リボンに向かって吠えていた。そして自分の尻尾を咬んで動きを止め、前足でリボンを踏んで押さえつけて引き摺り下ろし、リボンを銜えて遠くまで捨てに行くのであった。

 私たちは皮のボールで犬と遊んだこともあった。ボールをうまく咬むことができないと、ボールはどんどん離れていく。マウンミークーは、追い付けないとわかると吠え立てる。そして気を取り直して一撃、そのボールを前足で捕まえると、恐ろしげな声でぐるぐる唸りながら狂ったようにそのボールに咬みつくのであった。それでも気が収まらないのか、そのボールに向かってさらに大声で吠え立てている。その様子はまるでボールの表面がつるつるであることをひどく恨んでいるかのようであった。

 私たちは心から笑った。そう、この山林の夜という恐怖をきれいさっぱり忘れ去るほどに。


霊犬蒙迷科(霊犬マウンミークー)(4)へ続く

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