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シャン州をさまよった女流作家 曾焔の伝奇小説 藍色的枸閙花(ゴウナオの青い花)(1)

 
 もうすぐ午後三時になる。空にはかんかんのお日様が照りつけている時間帯だが、私はすでに授業を終えて家に戻っていた。家のそばの乾いた池の周囲を子供たちが取り囲み、賑やかに飛び跳ねるように遊んでいる。だがよく見てみると、その中に白い肌、黄色い髪、そしてたっぷりと髭を蓄えた外国人がいる。

 身に付けているのは短パンのみ、裸足で乾いた池の底に立っているところを見ると、どうやら彼は水浴びをしようとしているかに見えた。彼の体の露出した部位には泥が塗りつけられている、その泥はおそらく暑い中を歩き続けて堪らなくなった彼が、仕方なく塗りつけた清涼剤のようであった。

 メーサロンは一旦乾季に入ると、生活用水にも困るような有様であった。だが、この外国人は正しい場所を探し当てたともいえる。というのも、我が家の向かい側の山には、細々とした流れがあって、私たちは竹でその水を水溜まで引き、水溜からは塩ビの水道管で家の中まで引き込んでいるが、溢れ出る分はそのまま道の方へ流しているからであった。

 この水源からは、日頃、辛うじて人間の指ほどの太さの量の水が流れている。だが、二月三月になると、さらにそれが涙と呼んだ方がいいぐらいのわずかな水量となってしまう。それでも日夜を分かたずその水をちびちびと貯め込んでいるおかげで、少なくとも我が家で炊事、洗濯、水浴びといった用途に使うためだけなら、気を付けて使っていれば、ほぼ用が足りる量を確保できているのであった。

 我が家の水場には、いつもドラム缶いっぱいに水を満たしてあるが、それは洗濯や水浴びに使う水である。炊事など、口に入る水は台所の甕に溜めてある。以前、学校の近くに住んでいた頃は、遠くまでわざわざ水を汲みに行かなければならなかったことを思えば、今の情況はだいぶよくなっているといえた。

 その外国人は私を見つけると、助けを求めるように歩み寄ってきた。そして、外国人ぽいイントネーションたっぷりの、だがそれでもほぼ流暢と呼んで差し支えない中国語で私に話しかけてきたのであった。

「先生、このあたりでどこか水が出るところはありませんか?私は水浴びをしたいんです」

 だがこのあたりではおそらく、十中八九水が見つかることはないだろう。私は彼が体に塗りたくった泥を見て、笑いながら彼に言った。

「一緒に来て下さい。あそこにうちの水浴び小屋が見えるでしょう?そこで水浴びできるわよ」

 彼の困り切った顔に慰めと喜びの表情が浮かんできた。なんでも彼は麓の方から約二十キロもの道を歩いてここまでやってきたらしいのだ。その道は黄色い土埃が濛々と舞い上がる道中だ。そして彼はこうしてやっと水浴びをすることができるのである。

 彼は岸に上がってくると、地面に放り投げてあった草色のリュックサックを拾い上げ、竹でできた我が家の水浴び小屋へと嬉しそうに入っていったのであった。

 彼はトタンでできた扉を開けて、その中を覗き込んでいる。私は駆け寄っていき、水溜のドラム缶を指さしながら彼に教えた。

「ほら、水ならたっぷりあるでしょ?どうぞ遠慮しないで使ってくださって結構よ」

 実のところ、彼がこの時期のメーサロンで、こうして好きなだけ水を使えるという幸運は、そうそう滅多に巡り会えるものではない。

 しかし、彼の様子はなにやら困惑しているようであった。不思議そうな眼は、便器の横にあるちょうど腰の高さぐらいの水瓶に焦点を合わせている。だがこの水瓶の水は、トイレの水洗に使うものである。

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