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家有安琪児(我が家に天使あり)(8)

 

「それはお母さんがちょっと言い過ぎたんだよ。私のお仕置き棒は人を叩くためだけにあるわけじゃないんだよ。それより、お母さんが授業に行ったら、綺綺ちゃんは校長先生と一緒に遊ぼうね」

校長先生は綺綺に和やかに言った。そして綺綺を膝の上に置き、本当のお爺さんのようにいろいろと優しく語りかけているのであった。

 私はこの様子を見て、感動と同時に後悔の念に襲われた。さらにいえば、ここ数日の「緊急教育」はほとんど無意味で、この子はどこにでも入っていって、簡単にその場に馴染んでしまうのであった。つまりもし、綺綺が畏れる人がいなければ、職員室は綺綺の天下となるわけだ。事実、綺綺は校長先生をまったく畏れていないのである。

 一時間目の授業が終わった。私は遠くの方から職員室の入り口の横にある掲揚台のあたりを見ると、かなりの数の生徒が何かを取り囲んでクスクス笑っているのが見えた。近くへ駆け寄ってみると、綺綺が校長の帽子を被り、大きすぎる老眼鏡はつるの一本を耳に掛け、もう一本を肩に掛けている。そして手には、この子にとって最も恐ろしい権威の象徴であったはずの「お仕置き棒」が戦利品として握られていた。綺綺はまったく表情を変えず、唇を固く絞り、そして顔を半分かしげて自分を取り囲んでいる生徒たちを斜めに見上げている。笑う生徒たちを気にもせず、自らも笑いもせず厳粛な雰囲気である。

 私を見つけた生徒が声を上げた。

「副校長殿!お母様がいらっしゃいました!」

いつのまにか生徒たちは、綺綺を副校長に任じて遊んでいたのであった。

 綺綺は偉そうに私を見下ろして、生徒たちの笑いはさらに大きくなった。校庭の方からやってきてこの様子を見た校長が思わず吹き出した。だが私は綺綺が校長の老眼鏡を壊さないかということだけが気がかりで、すぐに近寄っていって老眼鏡を取り上げた。

 綺綺はこれには怒って校長のお仕置き棒を振り回し、地面にぺたんと座り込み、大声で泣き出した。

 「おい、見ろよ。副校長が泣いてるぜ」生徒たちはさらに大きく笑い出した。

 いくら何でもこれはやり過ぎだ。私は綺綺を抱いて職員室へ戻ったが、ちょうどそのときに次の授業開始の鐘が鳴り、綺綺はまたしても危機を脱したのであった。

 校長は綺綺に対してとても寛容であった。

「まあ、気にしなさんな。子供はまだ小さいんだよ。私がしばらく相手をしていてあげよう。しばらく遊んでいれば、緊張もほぐれて何事もなかったように忘れているだろう」

 こうして忙しい一日が終わり、やっと帰宅したあとの夕食時、綺綺は得意そうに言った。

「校長先生は私のことが大好きみたい。だって、お仕置き棒も使わないし、ぜんぜん怖くないんだから!」

 これからしばらくの数日間、綺綺の世話をしてくれる人はまだ見つからず、私は頑張ってこの子を学校へ連れて行くしかないのであった。綺綺はまるで影のように校長について回り、いろいろなところに顔を出した。綺綺の「副校長」の資格はなにやら実体を帯びてきているようですらあった。


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