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家有安琪児(我が家に天使あり)(5)

 
 それからというもの、朝食後に「お姉ちゃんと学校へ行く」のが綺綺の日課となった。そしていつものように長女を追って玄関まで行き、階上には這い上がれず、大声で泣き、それは自然と多くの生徒たちの注目を集め、彼らが慰めに来ると自分たちのおやつを分けてあげるのだが綺綺はそれを食べられない。結局そのまま玄関に投げ捨てられて散らかることになる。そんなことがいつも繰り返されていた。

 ある日のこと、登校時間はすでに過ぎていたので往来は静まりかえっていた。私が台所を片付けていると、綺綺が道ばたで大声で泣き出すのが聞こえた。私が慌てて駆け出していくと三、四歳の男の子がするめを手にしていて、ちょうど走り出すところであった。綺綺はこの男の子を指さしながら、「よこせ!食べさせろ!よこせ!」と、まるでその子が自分のするめを奪い取ったかのように騒いでいる。実はこの男の子は、まったく道理のないことを強引に主張し続ける綺綺に驚いて、その場を逃げ出したのであった。

 私は笑いながら綺綺を抱いて家に戻ったが、これからは道ばたに立たせないように注意して、他人のものを当然のように自分のものにすることをきつく戒めるしかなかった。

 このひとときも動くことをやめない生き物は、その破壊力の凄まじさで大いに私たちを悩ませていた。まるで、皿を割らないときはコップを割るという感じであった。宋おばさんが綺綺を背負って買い物に行ったときには、ちょっと気を逸らしている間に他人の玉子を一つまた一つと手に取っては落として地面に玉子の花を咲かせた。また、大きな衝撃音とともに缶詰の棚をひっくり返していた。

 またあるときは、宋おばさんが|胡《ホー》さんの家に洗濯のお手伝いに行ったときのことだ。宋おばさんは胡さんの家に着くと綺綺を庭で遊ばせていた。綺綺は早速胡さんが大切に育てていた石榴を全部摘み取って玩具にしていた。胡さんの奥さんは泣き笑いしながら私に言った。

「おたくのお嬢さんは元気ですね。私は雹が降ったり風が吹いたりして石榴が落ちては困ると思ってビニールシートで囲っていたんですよ。まさかおたくのお嬢さんが三分も経たないうちに今年の石榴を全部摘み取ってしまっていたとは……」

 私にしても、相手の苦笑いに合わせてへらへら笑うより仕方がなかった。胡さんの奥さんもやはり同様で、苦笑いしながらため息を漏らしていたのであった。

 ところで、私は教師なので、機会を捉えて綺綺に教育を施すことを忘れなかった。綺綺は私の厳粛な表情を見て事の重大さを覚ったようであったが、わかったのかわからなかったのか、さすがにこちらも自信はないのだが、とりあえずは頷いて見せ、これからは草花や木の実を勝手に摘み取らないことを約束した。

 だが、その後わずか数日でその約束は破られることになった。宋おばさんが綺綺を連れて|王《ワン》将軍の家に洗濯の手伝いに行ったときのことであった。綺綺は王さんの家で大切に栽培していた、青紫色の花を付ける咲きかけの二輪の薔薇を摘んで、花びらをばらばらにしてしまった。そしてその薔薇の花の近くに座り込んでおままごとを始め、その花びらを料理して食べるところであった。

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