家有安児(我が家に天使あり)(4)

 
 それに、夫の可愛がりようもまた度を超していて、彼が家にいるときは自発的にお風呂に入れたりもした。夕食後はいつも長女は三輪車に乗って遊んでいたのだが、夫はまだ五カ月のに満たない綺綺を三輪車の後ろに乗せて、まったく嫌がりもせず庭を走り回っているのであった。綺綺は喜んでわあわあと歓声を上げている。夫までもが大はしゃぎしながら手を打って喜んでいて、長女も一緒になって囃し立てる。一家のあるべき幸福を絵に描いたような情景であった。

 私は毎日学校で仕事があるので、綺綺は近所の宋おばさんに面倒を見てもらうことになった。綺綺が間もなく一歳になろうとしていた頃だった。この子はついに、「ママ」と喋ることを覚えたのであった。この頃は、誰を見ても「ママ」にしてしまっていたが、間もなく宋おばさんを「ばあば」、字おじさんを「じいじ」と呼ぶようになった。

 綺綺がよろけながら起ち上がったり、あちこちを這い回るようになった。宋おばさんとおじさんは、毎日綺綺を我が家に送り届けてくれるときに、その日に起こったこの子のとても笑える武勇伝を話してくれるのが常であった。綺綺が鍋を持ち上げた、お椀を持った、サンダルを薬罐の中に入れた、大さじ一杯の味の素を鍋に入れた、などなど。山での暮らしでは、通常、地面の高さに石を置いて鉄筋を二本渡し、そこで火を使う。ちょっとでも目を離すと、この元気いっぱいの生き物は、いつも何かしらやらかしてはみなを笑わせるのであった。

 家にいる綺綺が大好きないたずらは人の靴を履くことであった。一度などは私の踵の高い靴を引っ張り出してきて、足を入れ、一歩踏み出したところでばたりと前に倒れた。だがそれに懲りずに何度か試して、やはりこれは履きにくいと思ったのか、踵の高い靴は諦めたようだ。そしてこんどは長靴を引っ張り出してきた。綺綺の足はまだ長さが足りないので、長靴の縁がお尻の上の方までめり込んでいる。この企ても、やはり三歩も歩かないうちに転ぶという結果に終わった。しかし倒れても倒れても何度も這い上がり、さらに別の靴に履き替えて挑戦を繰り返す綺綺は、まさしく小さな英雄であった。その不屈の根性で、家の中のあらゆるところに、男物、女物、踵の高いもの、平底のものなど、ありとあらゆる靴が履き散らかされていた。このようにして家中が滅茶苦茶になってしまうのは確かに頭が痛いことではあったが、かといってどうしようもないのであった。

 綺綺が歩くようになり、やがてその歩行も安定し始めてきたころ、人についていくことも覚えた。毎日長女が朝食を済ませてから幼稚園に行くが、綺綺もまた長女に付いて行こうとするのであった。長女はこの同伴者が常識外れにやかましいことを知っている。綺綺を連れて行けば面倒が起きることがわかっているので、玄関を出ると一気に駆け出して綺綺を玄関に置き去りにするのであった。

 綺綺は玄関から上によじ登ることができないので大声で泣き喚くしかない。たくさんの生徒たちが通学の途中で我が家の玄関を覗き込むと、まん丸と太った可愛い幼児が眼に入る。すると一人また一人と綺綺をあやしていくのであった。ある生徒は飴をあげたり、またある生徒はビスケットをあげたりした。そして私が綺綺を抱き上げに行くと、綺綺の足下にはたくさんのお菓子が散らばっていて、綺綺は両手に山桃をしっかり握りしめ、嬉しそうに囓っているのであった。私はこの子が腹をこわすのではないかと心配してすぐさまこの山桃を取り上げて捨てた。だが綺綺はそれに対して抗議の声を張り上げ、喉が枯れるまで叫び続けた。


家有安児(我が家に天使あり)(5)へ





関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリ
Facebook Page
検索フォーム
ブログ記事一覧
プロフィール

deguchik

Author:deguchik
中国語で書かれた作品から、北タイやビルマ(ミャンマー)シャン州、黄金の三角地帯(ゴールデントライアングル)の歴史や風物を読み解いていきます。
個人のFACEBOOKページ
このサイトのFACEBOOKページ

Contact/ご連絡

Your name/お名前:
Your E-mail/メール:
Subject/件名:
Message/本文:

RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QR