家有安児(我が家に天使あり)(3)

 
 私はベッドに寄りかかったまま、何事もないかのように冷たい表情でグラフ誌を眺めていて、彼のそうした行動をつい眼にしてしまった。

「あなた、幸福なのにそれに気付かないというのは愚かなことだと思わない?」と話しかけていた。

強がりの私でも、涙がじわりと湧いてくるのであった。

 だが夫も忿懣はまだ収まっていないので、冷たく言い返してきた。

「そうだな。だがおれは何も考えていないから、銭喰い虫が二匹も生まれたんだ」

 私が何も言い返さないのを見て、夫は私に構わず子供をあやしているのだが、強ばった表情は徐々にほぐれてきているのであった。しばらくすると、

「まったく、このおれが、こんなに美人で可愛い赤ん坊を授かるとはな。うんうん。それにしても可愛い」

などと、自分に言い訳するように声を上げていた。

 夫はたばこの臭いをぷんぷんさせた唇で、娘の顔、身体、お尻などあらゆる部位に口付けた。しまいには、まったく嫌がるそぶりも見せず、娘の足をすっぽりくわえ込んでずるずると音を立てながら啜っている。

「黄色っぽい髪、大きい眼、真っ白い肌、柔らかくて、いい香りがして、可愛い可愛い赤ん坊だなぁ。でも、大きくなっても、母親みたいに凶悪な婆になってはいけないぞ」

夫は言えば言うほど機嫌がよくなり、同時に機会を上手に捉えて私の悪口を言っている。

 西遊記の一節にあるように、猪八戒が柿洞の大通りを掃除したのも、恥ずかしさを遮り、堪えきれない何かを隠すためであった。今は夫の好きなように言わせておけばよい。

 私たちの第二子|綺綺《チーチー》は、このようにして覇気に満ちた可愛さを武器に、この小さな家庭で最も寵愛を受ける立場を占拠したのであった。そして粗暴なる夫も、この子のためにわずかだが自重した。

 綺綺はは日々成長していく。白く丸々と太り、柔らかい髪は黄色がかった巻き毛である。元気いっぱいの両眼は黒く透き通っている。りんごのような顔はいつでも微笑みが浮かんでおり、この子を一目見た人はみな抱き上げては、みなに可愛がられた。この子は人見知りをすることがなく、人と平気で戯れる小鳥のようだ。この子を抱いているとなぜか心の底から温まってくるようであった。


家有安児(我が家に天使あり)(4)へ





関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリ
Facebook Page
検索フォーム
ブログ記事一覧
プロフィール

deguchik

Author:deguchik
中国語で書かれた作品から、北タイやビルマ(ミャンマー)シャン州、黄金の三角地帯(ゴールデントライアングル)の歴史や風物を読み解いていきます。
個人のFACEBOOKページ
このサイトのFACEBOOKページ

Contact/ご連絡

Your name/お名前:
Your E-mail/メール:
Subject/件名:
Message/本文:

RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QR