家有安児(我が家に天使あり)(1)

 
 産み落とされた赤ん坊の泣き声が聞こえた。夫の楊林がすぐさまカーテンを開けて、産婆の|周《ジョウ》おばさんに真っ先に尋ねたのは、「おばさん、男の子ですか、それとも女の子ですか?」この一言であった。

 周おばさんは看護学校を卒業してからこのかた、ずっと産婆の仕事に就いていて、それも四十年近くなる。メーサロンの十歳以下の子供たちは、ほぼ全員が彼女のお世話になっているのであった。周おばさんは産婆としての腕も一流だが、その性格と口の辛辣さもまた輪を掛けて一流であった。彼女は夫に対して遠慮なく言い放った。

「あんたたち男は、妻の容態を聞かずに、真っ先に赤ん坊の性別を聞く。男だろうが女だろうが、あんたの子供には変わりないだろうに!」

 周おばさんは生まれた赤ん坊に産湯を使わせて、暖かい布でくるんでから抱き上げ、その堂々とした風格で一瞥して夫を圧倒している。夫は勢いが振るわず、ただ苦笑いしているだけであった。おばさんはさらに、仕方なく慰めてやろうといった感じで、

「今はこんな時代なんだから、男の子も女の子もないよ。もっとも、私に言わせれば、女の子の方が孝行者が多いと思うけどねぇ」と言った。

 生まれてきたのが彼がいうところの「銭喰い虫」、つまり、またしても女の子であったことに、まだ納得がいかないようであった。腹に怒りを押さえ込み、だが怒気を発しながらその場をあとにした。

 「くそったれめ!どうしてこう何度も女ばかり生まれる。おれの人生は一生こうなのか?」

彼は怒り声も露わに頭を振り乱している。まるで、泣きたくても流す涙がありません、といったふうであった。

 彼が台所で何かしらがたがたやっている音をおそるおそる聞きながら、私の怒りも爆発寸前であった。落ち着いて細かく考えてみれば、女の赤ん坊が生まれることに、私に何か落ち度があったかといえば、当然そんなことはあり得ないのであった。子供を産み落としたばかりで疲れていたが、私は気を取り直して、こんどなにか言ってきたら、どう言い返してやろうかと作戦を練っていたのであった。

 ちょうどよいときにいいことを思い出した。夫は以前私にこう言ったことがあった。彼の母親が、彼が将来結婚できないことを心配するあまり、女の捨て子を引き取って養おうとしていたという話である。天は、天の恩賜の大切さも、ものごとの道理も弁えないこの男に二人の娘を与えて、結局一人の男の子も与えなかった。夫のまともな心はすでに犬に食われてしまったのだ。私はこのことを思い出し、悔しさは恨みともども飲み込んだ。


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