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【番外編】北タイ・メーサロン 墓誌に刻まれた物語(15)

台湾へ撤退しなかった部隊 一九五三年第一次撤退その後

 撤退に前後してさらにしばらく現場の混乱は続く。だが、それが終息すると、また反攻への体勢が整ってくる。

 ちなみに、異域の第六章は、この第一次台湾撤退に揺れる国民党軍部隊を描いたものである。主人公克保はそこで、撤退を潔しとせず、また、自らを引き留めて戦地に残る決断をする。道義に殉じる人間の思念が昇華するラストシーンは「究極の選択」に秘められた人間の美に満ちあふれている。
>>>克保 異域 (15)

 その克保が残留の理由を説明するシーンがあるが、その中に、戦友たちの墓が気になってしょうがないというくだりがある。現在は泰北義民文史館に立派な忠烈祠があり、国民党軍部隊の霊はそこに祀られている。

yiminwenshiguan.jpg

 撤退非撤退のいきさつは、さらに以下のように続いている。

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訳文:第一次撤退は蒋介石自らがこれを主導して進めた。段希文将軍らは、「自分たちが抗命して撤退しない」かのように中華民国政府の官僚たちを誤解させてしまい、さらに、当時この撤退を指揮していた指揮官、柳元麟将軍もこの情況がわからず、また、蒋経国(蒋介石の息子)もこの裏の事情を知らなかった。

 そのため、柳元麟将軍は蒋経国にこう報告した。「李先庚らの組織が反乱を起こしました。撤退命令に従わない将兵たちは、みな李先庚によって煽動されたものです」。それを聞いた蒋経国は机を叩いて大きな声で「李先庚を生かしておいては、私には蒋家の人間を名乗る資格がない!」と叫んだのであった。

 国民党雲南省党部書記長李先庚は、ことの重大さに慌てた。さっそく古くからの指揮官である陳誠(チェンチェン)に、同氏から蒋経国へ、ことのいきさつについて、「彼らが撤退しないのは大人(ダーレン、つまり蒋介石)の指示によるもの」と説明してくれるよう取り計らって欲しいと婉曲に訴えた。

 一九五四年末、第一次撤退の風評と騒ぎが収まった頃、かつて「滇緬邊區游擊隊」の副総指揮官であった柳元麟将軍が、またこの地に舞い戻ってきて、段希文将軍と合流した。そして、「滇緬邊區游擊隊」をとりまとめ、部隊はさらに大きくなった。柳元麟将軍は「撤退命令を拒否した将兵たち」の総指揮官となり、段希文将軍は、同部隊の副総指揮官となって、かつ第五軍軍長を兼任することとなった。

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 蒋介石の息子である蒋経国もまた、この撤退作業の現場指揮を執っていた。国民党の指導者(独裁者であり、最高権力者である)父の名において現場指揮を執っているのに、これに逆らうとは、この煽動者を生かしておいては父の名に恥じると怒ったが、実はこれは煽動でも反乱でもなんでもなく、他でもない、あなたのお父上の指示によるものなのですよと諭されたわけだ。

 そして、撤退の騒ぎが静まると、また残留部隊を整頓しなおした。その際、撤退の指揮を執っていた柳元麟将軍はその部隊の総指揮官に、そして、段希文将軍は副総指揮官と同部隊第五軍の軍長を兼任した。

 つまり、ネットなどでよく見かける「国民党第五軍段希文将軍」という呼び名はこのとき生まれたことになる。この時点で、一九五四年末である。

※九三師団というのは大戦中からの国民党軍部隊の師団名で、かつてはタイ領内でも作戦を行ったことがあるため、国民党軍部隊=九三師団というのは正式の部隊名ではなく、タイ側の俗称・呼称とされる。
>>>柏楊【金三角 邊区 荒城】 二十四 奇異なる九十三師団


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