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埃峩(アイオーという名の男) (7)


 その後、彼はかなり重篤な阿片中毒になり、それからというもの、漢人の主人は痛烈に打ち据えるわ罵るわで、その上さらには阿片を止めるようと迫った。だが彼はこうして若い頃から阿片を吸っていたため、彼の体はもうすっかり簡単には止められないほどの阿片中毒になっていたのであった。そんな彼が、一度阿片の吸引を止めたところ、いきなり大量に吐血したという。こうした苦しみに耐えきれなくなったアイオーは、ついにその漢人の主人のもとを出奔したとのことであった。

 夫は彼の生い立ちを聞いたためか、若干憐憫の情を抱きながら彼に言った。

「なあ。おまえさん、こうしてうちへ来たのも何かの縁だろう。だがな、そうして働かないでいれば、いつかは本当に飢え死にすることになっちまうぞ。それから、もう阿片は吸おうとは思わねえことだ。いいか。まずは薪を切ってくるんだ。一日に二束でいい。そいつを売れ。そうすりゃおまえさんは飢えなくて済むし、うまくいけばその日の阿片にだってありつけるだろう。どうだ?」

 アイオーはしばらく考え込んだあと、夫に答えた。

「私も最初はそうやって薪を切って売ろうと思っていたんです。でも、私は薪を切る山刀を持ってないんですよ」

 その言い分を聞いた夫は、台所から薪を切るための鉈を一本引き摺り出してきて、それをアイオーに手渡しながら言った。

「よし。じゃあ、おまえさんにはこいつを呉れてやろう。でも、おまえさん、こいつを売って阿片を買おうだなんて夢にも考えちゃならねえぞ。まずはなにより、とにかくこいつでちゃんと薪を切ってくるんだ」

そう言いながら、さらにポケットをまさぐって五バーツを取り出し、アイオーに手渡しながら付け加えたのであった。

「で、こいつは今日の阿片代として取っておけよ。阿片を一発吸って気力が出たら、さっさと山へ薪を切りに行って、そいつを売ってくるんだぞ!」

 アイオーはその鉈を手に取り、さらに五バーツ硬貨を受け取ると、感謝の言葉さえ一言も口にしないまま、さっと出て行ってしまったのであった。

 その翌日の夕暮れ時になり、アイオーはわずか一掴みほどの枯れ枝の束を、例によって目やにと涙でぐしゃぐしゃの顔をしながら持ってきた。ここメーサロンでは、このような枯れ枝を買う者はおそらく一人もいないであろう。だが出て来た夫はこう言った。

「まあ、いいだろう。まずはなんとか生きることを考えるんだ。たとえゆっくりでも続けてさえいれば、やがてはいい目を見ることもあるだろう。それに、もし他の奴らが買わないというのなら、おまえさんはおれたちの家に売りに来ればいいんだ。おれはちゃんと相場どおりに買い取ってやるからな」

 最初の数日、アイオーはこのような枯れ枝ばかりを拾っては、私たちのところへ売りに来たのであった。私たちは対価を支払うばかりでなく、彼に食事も提供した。それからしばらくして、それは少しずつだが、アイオーの振る舞いにも「良心」という二文字が現れてきたようで、その後の彼は、枯れ枝を拾って持ってくるようなことは徐々に減っていったのだ。彼は薪をメーサロンで売っていたが、買い叩かれたりするらしく、それもなかなか容易ではないらしかった。いつも彼に路上で出会うたびに、私はいろいろと助言を与えた。

「栗の木の枝を切ってきなさいよ。みなきっと争って買い取ると言い出すわよ!」

 それを聞いたアイオーは、近くで枯れ枝を拾い集めてきて売るという安直な方法を諦めて、少し脚を伸ばして遠くの山まで栗の木の枝を切りに行ったようであった。それからというもの、アイオーがメーサロンに薪を売りに来ると、人々はみな争うように買い求めていったのだった。


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