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【番外編2】北タイ・メーサロン 墓誌に刻まれた物語(3)

 
新中国の階級闘争の犠牲になったA氏の一家

 最近修築されたものと思われる真新しい墓があった。この墓誌から読み取れるのは、この墓の主がいわゆる有産階級の出身で、それが元で新中国にいられなくなったという、そもそものいきさつが書かれている。

中国語作品で読む 黄金の三角地帯とタイ北部 メーサロン墓誌sMaeSarongPhoto004.jpg

 それ以前の中国では、資産家には資産家なりのノーブルな道義を心得た者もいたし、そうした道義によって名望家として人から崇められていた一家もあったはずだ。だが、そうした尊敬の眼差しだけが彼らを見つめていたわけではない。この世に付きものの妬みというものは、凡そ人間がいるところには遍く存在する。

 そして妬みなどのマイナスのエネルギーは、社会変革の理想に燃えた他のポジティブなエネルギーと渾然一体となって、新中国成立の際には、急速な社会変革や共産党の内戦勝利の原動力として貢献したであろう。

 だが、毛沢東が主導する共産党に導かれた中国は、この後、そうしたエネルギーに頼ってただ盲目的に突き進む。このエネルギーは土法高炉で知られる大躍進、人民公社化による農業の極端な集団化、そして、ついには一大密告キャンペーンともいえる文化大革命という形をとって、何度も何度もあらぬ方向へと噴き出しては、中国社会を崩壊の瀬戸際にまで追い込むこととなる。

 共産党は、国内の政権を奪取するために農民や無産階級の支持を取り付けることに成功したときから、中国という、この土地の支配権争奪戦において圧倒的な主導権を手にしたといっていい。新体制が旧体制を殲滅するまでやり尽くす、このような中国が何千年も繰り返してきた易姓革命の模式は、このときもあまり変わらなかったようである。

 大陸では俗に「跟着黨走有肉吃」などという。党と一緒に進んでいけば肉だって食える…というような意味だ。そうしたシンパの中には、理念や理論などでよりもむしろ、共産党に与することで社会の秩序が変わり、その後の社会では自分が人の上に立てると信じて付いてきた志の低い者もいたはずだ。

 このような情況で各地に革命政権が成立すると、そこでは人民裁判などのいわゆる粛清が始まることになる。無産階級による告発が奨励され、階級闘争などという美名の影で、実態は道理の通らぬ憂さ晴らし大会の如き顛末が繰り広げられていたことであろう。

 この墓誌によれば、A氏の一家もこうして粛清の対象となり、まだ若かったA氏は、中国からの逃亡を余儀なくされ、すぐ近くの国境を越える道を選んだ。体力に恵まれた彼は、中国から南下して、ビルマ、シャン州のケントゥン(ミャンマー・シャン州・チャイントォン)へたどり着き、そこでの新しい人生に賭けることになったのであった。

中国語作品で読む 黄金の三角地帯とタイ北部 メーサロン墓誌sMaeSarongMuzhi001.jpg


 墓誌にはこう記されている。

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“A氏は雲南省勐海県出身。元佛海県人。幼い頃から豊かな家に育ち、その家は郷中においては私財を投じて人々を救ったこともあったが、新中国が成立した後の闘争で粛清されてしまったのであった。幸い彼は幼い頃から立派な体格と健康に恵まれていたため、なんとか南のビルマへと逃れることができた。幾多の困難を乗り越えてケントゥン(シャン州チャイントォン)に至り、その地において粉骨砕身働いたことで主に認められ、その資金援助を得てY氏の子女を娶った。”《墓誌の第一段落部分》

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 祖国脱出から始まった彼の第二の人生は、真面目に働き、その働きを雇い主に認められることでなんとか成功を収めた。こうして妻を娶ったA氏はこの後、ケントゥンと北タイの間を往復する商売人として第三の人生を生きていくことになる。


【番外編2】北タイ・メーサロン 墓誌に刻まれた物語(4)へ





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