シャン州をさまよった女流作家 曾焔の伝奇小説 阿卡花(アカ族の花)(14)最終回

 
「行かせはせんぞ、貴様ら!」

鄒冲はこのときとばかり声を張り上げている。

「貴様らこんなことをやらかして、さっさとその場を離れればそれで事が済むとでも思っているのかバカたれ!その二人の死んだ赤ん坊をちゃんと埋葬するのが先だろうが!」

 アンウォーにしてもここまで言われてしまっては背嚢を下ろすしかなかった。そして、一人で山のほうの谷へ入っていってバナナの葉を刈り取ってきて、その二人の嬰児の小さな屍体をくるむと、そのままそれを持ってどこかへ埋めに行った。

 埋葬から戻ると、彼らは自ら草屋に火を放ち、そのまま夫婦はどこかへと行方をくらませたのであった。

 アカ族は双子をもっとも不吉なものと考えている。彼らは双子とは妖怪の生まれ変わりで、それは禍をもたらすために生まれてきたと固く信じている。だから、双子が生まれてくると、すぐさま燃えさかる火の中にくべて殺し、また山刀で切り刻んで殺し、はたまたそのまま大河に投げ捨てる。さらに残酷なやり方もあって、脱穀用の臼に放り込んで、生きたまま搗き潰してしまうこともあるらしい。そして、このように双子を生んだ夫婦は村を離れ、もちろんその家には火を付けて、跡形もなく燃やしてしまうのだ。

 だがこれこそが、ただ一つ、彼らに残された方法なのであった。禍を吉に転じるにはこれしかないと思われており、さもなくば、アカ族の集落全体に大きな禍が降りかかるというのであった。たとえば、火災、疫病、鉄砲水で集落全体が水没する、穀物が不作となって収穫できなくなる……、こういった禍である。

 この恐るべき悪しき風俗は、一体いつ頃から彼らと共に存在しているのだろうか。人間性は皆無で、その残酷さは想像を絶している。

 アカ族の生活は大変遅れている。そして、人々はなんとか生きていくだけで、すでにもう精一杯なのであった。人口はあまり増えないし、死亡率も極めて高く、平均寿命は四十歳に満たない。天はそうした日々衰亡していく彼らを憐れんで双子を授けてくれるのに、彼ら自身はそれを喜ばず、むしろ悲しみ、こうした残酷な方法で双子を扼殺している。このような悪習悪俗は、一体いつになったら絶えてなくなるのであろうか。

 それにしても不可解なことは、彼らアカ族に、それほど多くの双子が生まれているのかということである。それともただ単に、彼らが双子を殺す悪習の惨劇が大いに人の関心を惹くために、こうしてタイビルマ国境のあらゆる場所で、アカ族のこの双子殺しの話をたびたび耳にするだけなのだろうか。

 このような無辜の小さな生命が難を逃れることができるよう、アカ族に双子を賜ることがありませんようにと、私は神に祈らずにはいられないのであった。そしてさらに祈りたい。アカ族たちの夢枕に立ってもらい、こうした残忍な行為をしないよう、直々に彼らへのお告げを賜りたいのであった。

 そして今、また冬の終わりが近付いてきて、アカ花が咲いている。アイナ、あなたは一体どこにいるのだろう。あなたという一輪のアカ花が、かつて勇敢にこの同族の非人間的な悪習に立ち向かったとに、私は愚かにも気付きもしなかった。私はすべてのアカ族が、あなたがそうしたように、この悪習に立ち向かうことを願う。ほんの小さな一粒の愛情が、アカ族たちを目覚めさせ、そして慈しみの愛をこうした双子たちに捧げるとすれば、それはアカ族にとっても大いなる福音となるはずだ。

 不幸にも、あなたはこうした俗人たちの、根深い迷信に打ち勝つことはできなかった。だが、少なくとも私は、あなたの悲哀と絶望を理解しているつもりだ。

 双子になんの罪があるのか、双子がどんな悪いことをしたというのか。この世には、どうしてこのような残酷な風習があるのだろう。カワ族たちが首狩りの習慣を打ち砕いたように、このアカ族の双子の迷信にも、それを打ち砕く方法がないものであろうか。

【阿卡花(アカ族の花)完】





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