シャン州をさまよった女流作家 曾焔の伝奇小説 阿卡花(アカ族の花)(12)

 
 だが今回の一件で、私はこのアンウォーを憎むこと骨髄まで達していた。しかし、冷静に考えてみると、双子を扼殺させたのはアカ族の習俗が持つ力であって、どうして手を下しただけのこの男の無知蒙昧を責めることなどできようかとも思った。そうなのだ。憎むべきは、人ではなく、アカ族のそうした習俗そのものなのであった。

 それからしばらく経ち、アイナのお腹が眼に見えるほど大きくなってきた。

 彼女は大きくなるお腹をさすっては、物憂げに溜息を付いている。その様子は「あのこと」をとても心配しているように見えた。それに彼女は食事も減らしているようであった。たくさん食べることでお腹が大きくなり、お腹が大きくなるからお腹の中の子が増えて、そしてその結果、胎児は双子になって生まれてくるのではないか、どうやら彼女は本当にそう信じているかのようであった。

 あるとき、彼女と街で偶然行き会ったときに、この子供は双子じゃないと思うわよと彼女を慰めたことがあった。それに今回は、私が見るに彼女のお腹がそれほど大きいとは思えず、ごく通常の妊婦に見えた。

 そしてその冬も終わりに近付き、アカ花が咲き乱れる季節がやってきた。山も丘も、道ばたも家の庭も、みな艶やかさを競い合うかのような黄色い籠がまき散らされたかの如き光景に包まれていた。

 アイナは薪を切って戻るとき、毎日のように頭にも身体にも、全身に纏うようにこのアカ花を抱いて帰ってきた。あのアンウォーにしてもそうだった、彼は帽子の上に二輪のアカ花をのせていて、その滑稽さには思わず笑いがこみ上げた。

 だが彼ら夫婦が毎日薪を売って得たわずかなお金は、米の購入に使うほんのわずかな金額を残してほとんどが阿片代に消えていった。そして夜になると、この夫婦は床に横たわって阿片の煙を吸っては吐き、陶然とした境地に浸っているのであった。

 こうしてアイナもいつの間にか阿片を吸引するようになっていき、やがて阿片中毒になっていた。美しかったあのアカ花はすでに枯れ落ちてしまったのであった。あのアンウォーが来てからときてからというもの、彼女の草屋を覗くこともめっきり減っていたし、当のアイナが阿片中毒者となってしまった今では、私はほとんど顔を出すことがなくなっていた。

 私は生来、なんであれ堕落した存在自体が嫌いである。もちろんたとえそれが人間であってもだ。そんなわけで、私がアイナを気に掛けることは、もうほとんどなくなっていたのであった。

 ある朝、ちょうど日が昇り始めた頃に目を醒ました私は、アイナの草屋の中から元気のいい赤ん坊の泣き声を聞いた。アイナの赤ちゃんが生まれた。それは私にとっても新しい命が生まれてきた喜びであったし、私はそのことにとても興奮したのであった。私は急いで髪をとかし、洗面を終えそそくさと草屋を覗きに行った。

 小さな草屋の扉はきっちり閉まっていなかったので、私は扉を押しながら中に声を掛けた。

「アイナ!もしかして生まれたんじゃない?女の子、それとも男の子?」


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