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シャン州をさまよった女流作家 曾焔の伝奇小説 阿卡花(アカ族の花)(1)

 
 ここは三本の道が交わる三叉路である。一本の道はメーサロンの方へ向かって延びており、もう一本はバーンヒンテークへ、そして、最後の一本は山を降りて平地に向かう道だ。この三叉路の傍らにちょっとした集落があり、そこには十戸程度の貧しいアカ族たちがまとまって住んでいる。

 その年の雨季になり、その夏の間、私は二人の子供を連れて山の麓のメーサイに滞在していた。そしてその休みも終わり、学校の新学期に合わせてメーサロンに戻るため、降り続ける雨をも顧みず、おそらくメーサロンあたりにしかないであろう旧式のおんぼろジープに揺られながら、山道を走っていた。

 大粒の雨、ぬかるむ国道。ジープは数え切れないほど何度も何度も轍にタイヤを取られては、なんとかこの三叉路の場所までたどり着いたのであった。この先にある山のあたりで、豪雨によって国道の一部が流されて路面が崩落したため、このまま進むことは非常に危険である。そのためジープはこれ以上前に進むことができず、私たちはここで降りることを余儀なくされたのであった。もっとも、このような驚くべき古さのおんぼろジープに乗っていること自体、すでに危険な行為であるといえた。走るごとに冷や汗が流れ、揺れるたびに心臓が凍るぐらいなら、乗客たちはむしろ歩く方がいいとさえ思っていたのである。そしてみなそのジープから降りて運賃を払って各々のバッグを背負うと、徒歩で山を越え、泥流を渉り、それぞれの行く先へと散っていった。

 私の二人の子供たちは、上は四歳ちょっと、下はやっと一歳になったばかりだった。さらに、私たちはほとんど山から下りたことがない田舎者らしく、メーサイの町で日用品をしこたま買いあさっており、徒歩で山を越えて進むことなどあり得ない相談であった。私たちは仕方なくちょうどそのあたりにあったアカ族の集落に留まって、とりあえずはしばらく様子を見ることにしたというわけだ。

 道の脇に、地元のアカ族たちが道ゆく人のために建てた、木材を地面に打ち込んでその上に材木を渡して茅をふいただけの粗末な|四阿《あずまや》があった。私は下の子を背負い、上の子を抱きかかえ、両手には日用品がぎっしり詰まった大小のカバンをぶら下げて、そのままその茅葺きの四阿へ駆け込んで雨を凌いだ。どうすればいいだろう。まさかここで一夜を明かすことになったりはしないだろうか。四阿の外を降りしきる雨は時を経るごとにひどくなっていくようであり、私はこのあとどうなるのかまったく見当も付かないのであった。

 ずいぶんと多くのアカ族の子供たちが、いつの間にやらこの四阿を取り囲むように集まってきて、私たち母子三人を好奇心いっぱいの眼で眺めている。アカ族の村長とおぼしき人のよさそうな老人が一人進み出てきて、アカ族の人間を二人、子供と荷物を私の代わりに持たせて、私たち三人をメーサロンへ送り届けるというのはいかがですかと聞いてきたのであった。それを聞いた私は思わず緊張が綻び、即座にお願いすることにした。

 このアカ族の村長の歳は五十過ぎぐらいであろうか。背は高く痩せている。顔の彫りが深くて眉目は立派である。もしこのような襤褸を身にまとっていなければ、この人はかなりダンディな男性に見えることだろう。彼はさっそく、おそらく彼の娘とおぼしき二人のアカ族の少女を捜してきてくれた。この二人の少女たちは、たぶん野良仕事から戻ったばかりだと思うのだが、全身泥だらけで、雨でびしょびしょに濡れていた。アカ族の民族衣装である黒い上着と短いスカートを着ていて、首や腕には数え切れないほどの装飾品と硬貨を身に付けている。彼女たちが四阿へ入ってくると、おそらく彼らが一生入浴する習慣がないためと思われるが、何とも言えない独特の体臭が漂ってきた。


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