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シャン州をさまよった女流作家 曾焔の伝奇小説 風猴乾(猿の干物) (8)

 
 翌朝、空が明るくなりかけた頃だった。鄒冲はあの猿の親子を籠の中に押し込めて、上から襤褸布をかけて遮り、いそいそと出て行った。

 朝早くから、この男は彼の「霊方妙薬」を携えて、メーサロンの丘の上にある劉さんの家に売り込みに行ったらしい。というのも、劉さんの奥さんが軽い鬱病を患っていて、この病気を早く治したいと思っていて、平素からいい医者がいないか、いい薬がないかと尋ね回っていたからであった。

 劉さんはこの男が滔滔と説明する病を取り除く妙案を聞くと、逆に反感を持って彼を怒鳴りつけた。

「どこにそんな治療法があるというのだ。この罰当たりめが!猿だって命があるんだぞ。しかもこの猿は親子じゃないか。まったくひどいことをする。いっそのこと私に売れ、私が山へ連れて行って放してくる!」

 だが鄒冲はそれでもまだ諦めなかった。劉さんの家をあとにすると、その猿を手に提げながら、このメーサロンの街を行ったり来たりしている。だが所詮は小さな街に過ぎないので、結局すべての家を回ってしまった。そして最後に、知恵遅れの子供がいる張さんの家にこの猿をお届けに上がったのだ。だが、結果は想像に難くない。鄒冲はこの猿が知恵遅れの治療に効果がある「相当霊験のある」治療法であると触れ込んだらしい。

 夕方になって、鄒冲はへとへとになってこの猿を連れて家に帰ってきた。

 祥林さんがやってきて、

「おう。鄒冲さん。あの二匹の猿はもう放してやったのかい?」と確認している。

「私は本で読んだのだが、明日が一番いい日取りだそうだ」鄒冲は仕方なくその場を取り繕った。

 祥林さんが帰ったあとも、鄒冲は夜が長く感じられて仕方がなかった。とりあえずあの猿の親子は家の後ろ側にある薪置き場に隠しておくことにした。しかし、好奇心を抑えられないたくさんの子供たちが、竹垣の隙間からのぞき見に来る。子供たちはこの猿の親子の腹を空かせて喉が渇いている様子、そして、お互いに憐れむようにしっかり抱き合っているのを見た。

 家の外で、おまえどけ、いや、おまえこそどけなどと争いながら、隙間からこの猿を覗いていたが、平素はこの子供たちもこの鄒冲が怖いので、大きな声を出すことはない。覗いているのがばれると、薪置き場のあたりから追い払われてしまう。

 子供たちが竹垣の隙間から中の様子を窺っていると、麻袋を手にした鄒冲が台所から出て来た。そしてその麻袋に猿の親子を放り込み、その口をきつく縛って溝の横の地面に置いた。台所に入ってぐらぐらに湧いた熱湯を持ってきて猿を入れた袋の上からかけた。竹垣の隙間から覗いていた子供たちはこれを見て思わず真っ青になった。猿の親子は熱湯がかけられると袋の中から悲鳴を上げていたが、しばらくして息絶えたようであった。


風猴乾(猿の干物) (9)最終回へ




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