【番外編1】北タイ・メーサロンの雲南香腸(雲南ソーセージ)づくり

 
 北タイのメーサロンの中国人たちは、曾焔が教鞭を執っていた中国人学校など、タイにありながらもなんとか自分たちの文化を守って暮らしている。もちろんそれは食文化も例外ではない。

 たとえば、メーサロンを訪れた日本人の間で絶賛されている雲南ラーメン。地元産の中国式醤油。雲南省・シャン州・北タイにかけて広く食されている漬物は、どこで食事をしても突き出しのように出てくる。そして、ここで紹介する雲南香腸もそうした彼らが伝承してきた食文化の一つだ。

 メーサロンを歩いていると、どこからともなく「茶を飲んでいけ」と声を掛けられることが多い。この土地では多くの中国人が茶園を経営しているので、本来は自分たちの茶を飲ませて販売するわけだが、商売する気がないのか、いつかは売れると思っているのか、それともただ暇つぶしに付き合わされているのか、いまひとつ判然としない。

 だが、こうして腰掛けて何時間も世間話に興じていると、メーサロンののどかな空気が体の中まで共有されてくるような感じがしてとても癒される。そうしていつもつい長居してしまうのである。

 いろいろなお店と顔なじみになってきたころ、ある茶園が副業で雲南香腸(雲南の中国式ソーセージ)を作っているという話を聞いた。見に行くと、たしかに中庭には結構な量が干してあり、日光を浴びて褐色に輝く香腸は、何とも食欲をそそる姿をしている。なんでも月に二回ほど仕込むとかで、この香腸は遠くバンコクの雲南料理店まで運ばれているそうだ。

 肉そのものが持つ味わいを大切に残して、歯ごたえを持たせるために粗く刻んだジューシーな豚肉。保存性を高めつつ骨太で硬派な肉のうまみをくっと引き出す多めの塩。臭みを消しながら、味の柱をしっかりと脇から支える生姜やニンニクなど生の香辛料。そしてその上に香りという切れ味を添え、噛みしめるごとに口の中に湧き起こる楽しさと複雑さを演出する茴香や花椒などの香辛料をたっぷりときかせる。そうした微妙なハーモニーが作り出す雲南香腸の味覚。

 雲南省の香りを引き継ぐこの香腸は、彼らの先祖たちが雲南省にいたときの味そのままに再現されている。

 北タイは高原地帯であり、この香腸の熟成にはとても適した、湿気の少ない涼やかで優しい風が吹き抜けていく。中国雲南省、シャン州と連なる食文化を共有できる気候風土を持っていることがこんなところからも窺える。

 写真とともにその製造工程を紹介。

(1)生の小腸(豚)をきれいに洗浄しておく。小腸は薄くて長く、破れやすい。慎重に洗浄する。

 製作を仕切っているこのおばさんによると、「むかしは肉を買うと、骨や小腸までただでくれたもんだけどねぇ。最近豚を飼っている連中がどうにも…」と、つまり、ケチになったと言いたいのであった。だが逆に、この言葉によれば、この肉が地元で養豚された豚の肉であることがわかる。

 地元の山岳民族や中国人の副業としてのこうした養豚は、曾焔の作品にもよく出てくる。断魂辣(魂が消し飛ぶ唐辛子)

中国語作品で読む 黄金の三角地帯とタイ北部【番外編】北タイ メーサロンの雲南香腸(雲南ソーセージ)づくりc.jpg



(2)肉を計量して香辛料を加えて混ぜ合わせる。肉は挽肉ではなく、三~五ミリのざく切りと呼んだ方が正しい。ニンニクや生姜などの生の香辛料、茴香、花椒、白胡椒などの乾いた香辛料、保存性の決め手となる塩は、ここで目分量でどさっと一気に加えて肉全体に均等に行き渡るように大きな動作で混ぜ合わせる。

 肉の入った盥が大小に別れているのは、二人それぞれの家庭で味付けの好みも異なるため、二人は別々の味で作っているからである。ただ、この部分だけが二手に分かれるが、それ以外の工程は省力化のため一緒にやってしまう。

中国語作品で読む 黄金の三角地帯とタイ北部【番外編】北タイ メーサロンの雲南香腸(雲南ソーセージ)づくりa.jpg

中国語作品で読む 黄金の三角地帯とタイ北部【番外編】北タイ メーサロンの雲南香腸(雲南ソーセージ)づくりb.jpg



(3)しばらく置いて味を馴染ませてから、肉を腸に詰めてゆく。ミンチの機械の送り込み部分を使い、その先にじょうごのような部品を取り付ける。その部品にはたくし上げた袖のように小腸をかぶせておき、味付けされた肉はその中へ入っていく。詰め込まれた部分を丁寧に受け止めながら、ムラが出ないように一定の速度で送り出していく。

 この作業は、どんなに丁寧に進めてもときどき小腸が破れてしまうのだが、その部分を捨てて、新たな結び目を作ってやり直す。入りきれなかった肉は別に分けておき、炒めたりしてその日のうちに食べてしまう。

中国語作品で読む 黄金の三角地帯とタイ北部【番外編】北タイ メーサロンの雲南香腸(雲南ソーセージ)づくりd.jpg



(4)このあと適当な長さに区切ってひもで結び目を付ける。乾燥工程ではこの結節部分を竿に引っかける。生の腸は痛みやすいので、肉に含まれた肉に含まれた塩分と、外側からは密造酒と思われる地元産白酒(中国式のスピリッツ)で消毒する。

 小腸から緑色の物体が透けて見えている。これは刻んだ生の茴香の葉だ。この別バージョンは好き嫌いが分かれるが、香腸好きにはたまらない生のハーブの香りがつんと強く香る通な味わいである。

 この向かいに新時代麺包店という、およそ新時代とはいえない名称のパン屋があるが、その主人が自分用にとおばさんに特別に依頼したものだ。

中国語作品で読む 黄金の三角地帯とタイ北部【番外編】北タイ メーサロンの雲南香腸(雲南ソーセージ)づくりe.jpg

【番外編】北タイ メーサロンの雲南香腸(雲南ソーセージ)づくりf.jpg



(5)小腸に詰めて結節を終えた香腸は、竿に引っかけて乾燥させて、水分を抜いて熟成させる。できあがったばかりの香腸はなるべく強い太陽光で一気に水分を飛ばし、水分が一定のレベルまで下がると直射日光を避けて保存し、香腸は保存・熟成過程に入る。

 そしてそのまま長期間熟成させていくが、半年以上保存がきく。保存だけなら数日で完成するが、熟成が長い香腸は味わいに深みが出て、香料と肉のうまみが交わって繊細な味を出していく。

 塩味と香辛料がきいた干し肉のような味わいと、熟成が進むにつれて肉のうまみが出てくる。

 曾焔の短編、芳隣(佳き隣人)に、保存食として干し肉を作るくだりが出てくる。

中国語作品で読む 黄金の三角地帯とタイ北部【番外編】北タイ メーサロンの雲南香腸(雲南ソーセージ)づくりg.jpg

中国語作品で読む 黄金の三角地帯とタイ北部【番外編】北タイ メーサロンの雲南香腸(雲南ソーセージ)づくりh.jpg




さらに多くの写真がこちらにあります。

>>>雲南香腸(雲南ソーセージ)写真 in Facebook<<<




編集などできないのですが、その時に同時に撮影した動画をアップしておきました。






関連記事
スポンサーサイト

テーマ : タイ・ミャンマー国境
ジャンル : 海外情報

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリ
Facebook Page
検索フォーム
ブログ記事一覧
プロフィール

deguchik

Author:deguchik
中国語で書かれた作品から、北タイやビルマ(ミャンマー)シャン州、黄金の三角地帯(ゴールデントライアングル)の歴史や風物を読み解いていきます。
個人のFACEBOOKページ
このサイトのFACEBOOKページ

Contact/ご連絡

Your name/お名前:
Your E-mail/メール:
Subject/件名:
Message/本文:

RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QR