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シャン州をさまよった女流作家 曾焔の伝奇小説 風猴乾(猿の干物) (7)

 
 鄒冲は私がすでに自分の罠にはまったと思っているらしい。眼がぱっと明るく開いた。まったく情のこもっていない慇懃な言葉遣いに変わった。

 だが、「はっきりと具体的に言ってもらわないと……」私は冷たくあしらった。

「片手でどうだい!」

そう言うと彼は片手の指を全部伸ばして私の眼の前にかざしてちらつかせる。その上、さももの惜しそうに、

「君だから、五百バーツにしておくんだよ。他人だったら五千バーツでも売らないところだ」

などと言っている。

「五百バーツですって!」

私はその金額に驚いた。

「いくら何でも高すぎるわよ!」

 このときは月末で、ちょうど家計が苦しくなってきているときである。私がそんなお金を出す余裕などあるはずもない。それに、もし夫がこのことを知って、私が鄒冲にたかられて異常な高値で猿を買わされたと知ったら、彼はきっと私を気違いだの馬鹿だのと罵り倒すに違いないのである。もっと言ってしまえば、そもそも昼間にアカ族の男からこの猿を買ったとき、その値段はたったの三十バーツであったはずだ。それがいまは、彼の一ひねりで十倍以上に跳ね上がっているではないか。とんでもない罠であって、獅子が大きな口を開けているようなものである。

 鄒冲の表情はいつの間にか厳粛な雰囲気に変わっている。

「五百バーツが高いって?私はこれでも人間としての情を優先させているつもりなんだがな。わかるかい?これは間違いなく価値のある特別な猿なんだ。信じないのか。それともやはり金額のことが頭から離れないのか。五万バーツでも手に入れたいと思う人がいるのに」

 ところで、こうして聞いていると、私にはこの猿の親子を野に放つという善行などとてもできそうにない。心の中ではあの猿の親子をなんとかしてあげたいと思っているのだ。あの猿の親子は本当に不幸であった。どうしてまたよりにもによって、このような男の手に落ちてしまったのだろうか。

 この男は人間性が酷薄にできていて、無益な説得は徒労に終わり、それがまたこの男を増長させる。私としては口を固く閉じて、この男との議論そのものを避ける他はない。

 彼が私のこの様子に気づき、また、値切るつもりすらないとわかったようである。つまり、この取引は吹き飛んだということがわかったようで、そうなると現金なもので、表情も変えずにさっさと我が家をあとにした。


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