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シャン州をさまよった女流作家 曾焔の伝奇小説 風猴乾(猿の干物) (6)

 
 鄒冲の大げさな話で、私いつの間にか母猪瘋と羊耳瘋という病気にされてしまった。

 だが私は別に顔色を変えるでもなく、

「鄒冲さん。あなた昼間にあの二匹の猿を野に放つとみんなの前で言ってましたよね。それがどうして人に猿の脳味噌を食べさせる話になっているんです?」そう言って、彼の言葉を遮った。

「野に放つだって?そういうことは李祥林のような馬鹿がやることだし、それにお金をつぎ込むなどということもまた然りだ」

鄒冲は倦むことなく延々と喋り続けている。

「言っておくが、今日私が買い求めたあの二匹の猿は、実は特別な猿なのだよ。滅多にない機会ではないか。ただ脳味噌を取り出して食べるだけで、母猪瘋、羊耳瘋、失心瘋、大痲瘋、これらすべての難病はすぐに消え去ってしまうのだ!」

 私は聞いているうちにどんどん眉がつり上がってくる。誰の眼にも明らかなほど沸き立つ反感は、もう隠しようがなくなっているはずだ。

 この鄒冲という男は、どうしてこうも人の語気や気配を察することができないのであろうか。私がどう感じているかなどお構いなしに、さらに力を込めて言い続けている。

「この種の猿の脳味噌を食べるなら、生きたやつを食べなければだめだ。まず二枚の板を持ってきて、真ん中に穴を開け、そこに猿の頭をがしっと嵌める。生きたまま猿の頭をのこぎりで切って、頭蓋骨を開けて脳を露出させる。そうしておいて匙で一口一口掬い取り、冷めないうちに食べるのだ。たくさん食べる必要はない。二匹分も食べれば、君のその病気もすっかりよくなるはずだ」

 聞いている私は慄然として、鳥肌が立ち、脊椎から悪寒が走ったようであった。このような残酷な話しぶりは、一言で言えば、私に対する精神的な虐待ではないか。私は思わず、

「もういい加減にしてよ。残酷すぎるわ。生きたままの猿の脳味噌を食べるなんて、病気が治る治らないの前に、恐怖で気が狂ってしまうわよ」と叫んでしまった。

 鄒冲は思うところあってか相変わらず厚顔無恥で、さらに大げさに言う。

「怖がることはないじゃないか。君がやりたくなければ私が準備してあげよう。霊験あらたかなんだから!」

 私は鳥肌を立てながら何度も反論しようとしたが、こうした残虐行為に関することは、うまく口に出して言えないのであった。

 しかたなく私はしばらくじっと耐えていたが、やっとこの男の真意が読めてきた。この男は奇貨居くべし、単に自分の猿の値段を吊り上げて、高く売りつけようとしているだけなのであった。さもなければ、人のためにここまで熱心に勧めるはずもなく、また、私を病気にする必要もない。

 そこで私は直裁に「いくらで売りたいというの」と聞いてみた。

「身内のようなものじゃないか。安くしておくよ」


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