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シャン州をさまよった女流作家 曾焔の伝奇小説 風猴乾(猿の干物) (5)

 
 鄒冲はここで目くらましのような言葉を口にした。

「野に放つのだって、いつどこでもというわけではないだろう。やはり、よい日を選んでそうするのが正しいと思うが」

 彼はそう言いながら猿が繋がれている木の枝を担いで歩き出そうとした。周囲の人間はこれには答えようがなく、たださっと道を空けて、彼が行かせるに任せた。

 私は家に戻ったあと、夜に生徒たちの宿題を見ていた。すると、鄒冲が我が家にやってきて、幽霊のようにいきなりランプの下に現れて、私を驚かせた。

 「あら、鄒さん。何のご用かしら」

あまり聞きたくなかったがとりあえず聞いた。実際あまり時間を浪費したくないのであった。

 鄒冲はすぐには答えず、何か捜し物でもするように周囲をきょろきょろと見回すと、怪しい雰囲気を作って低い声で話し出した。

「曾先生。あなた、以前に眩暈を起こして倒れたことがありましたよね。私はすでに言ったと思うが、それはあなたがを患っているからなのだよ。母猪瘋は血行に関係があるのだよ」

 彼が知ったかぶりをして虚勢を張っているのは、とうの昔にわかっている。故意に訳のわからない話を大げさに話しているのだ。しかし、いちいち相手をするのが面倒なので、反論せずにそのまま言わせている。

 私が何も言わないのを見て、私が彼の話を信じていないと感じたようで、さらに念を押してくる。

「なに、焦ることはないんだ。要は、その元を取り除けば、今後そういうことが起きないというわけなのだ」

「取り除く方法があるんですか」

このままでは何も変わらないので、私は適当に相槌を打つことにした。

 いかにもこれからが肝心の部分ですと言わんばかりに、鄒冲さらに声を低めた。

「猿の脳をお食べなさい。二個も食べれば、あなたの母猪瘋は原因を根絶することができるはずだ」

 それを聞いた私はもう少しで嘔吐しそうになった。反感を禁じ得ず、思わず眉を顰めた。

「そんな恐ろしいこと言わないでください」

確かに以前、一度や二度は眩暈で倒れたことがあったが、それは虚弱体質によるもので、鄒冲がいうような手の施しようがない、しかも名前も知らないような難病によるものなどではなかった。

「そんなふうに言うものではない。何が恐ろしいものか。まだ二十歳そこそこで、こうした羊耳瘋を根治した方がいいに決まっているではないか」

 鄒冲の語気はまるで私を心から気遣っているようだが、あるときは母猪瘋といい、またあるときは羊耳瘋などという、聞いたこともないようなでたらめな病名まで出してきて、まるで私はほとんど生き延びる見込みがないかのような言い方である。これには私も笑いがこみ上げてくるのであった。

 まるで長者の風を装う鄒冲は、辛抱強く、しかも善意に満ちあふれた様子で私を導こうとしているようであった。

「君たち若者は自分たちだけで決めたがり、年長者の意見を好まないようだが、身体の大切さはわかっているだろう。君のこの病気は、本当に危険な病気なんだぞ。一度発作が起きたら、しっかり押さえていないと自分の舌をかみ切ってしまうのだぞ。慢性化したりすれば、それこそ爆弾を抱えて生きるようなもので、もし誰も傍にいなければ取り返しの付かないことにもなりかねん」


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