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シャン州をさまよった女流作家 曾焔の伝奇小説 龍鳳呈祥(きっといいことがあるさ)(8)

 
 眠れなくてどうしようもない。私は手元にある新旧の書籍を手にとって、ぱらぱらと読んでは夜を過ごした。そして、自分のやるべきことがやっと見つかったような気がした。

 そして次の日、午後に学校から戻ってきて、玄関の鍵を開けようとしていると、背後から孔三元の快活な掛け声が響いてきたのが聞こえた。

「先生~先生~。天は苦労人を見放さずですね。今日はかなりの収穫がありました。見てください、九匹も捕まえましたよ。おお、よしよし、可愛い奴らだ。ほら、九匹も!」

孔三元はそう言いながら、大股で玄関の前にやってきて、肩に斜めがけにしている竹籠をそこに置いた。

 私は大喜びで振り向いて彼を見た。孔三元は膝丈の軍靴を穿き、ゲートルをきっちり巻いている。そして、手には分厚い黒のゴム手袋をはめて、一尺ほどの長さの鉄のはさみを手にしている。まさしく「完全武装」といった出で立ちで、しっかりと防備していた。

 私はほっとして思わず笑顔がこぼれてきた。

「ずっと心配していたのよ。あなたが蛇に咬まれやしないかと思うと、もう心配で心配で」

「蛇だって怖がって私を咬もうとしませんよ。私のこの身のらい病の毒は、蛇どもが持っている毒よりさらに強いですからね。どんな毒蛇が私を咬んでも、私の毒で蛇の方が先にやられてしまいますよ」

孔三元は朗らかに笑っている。筋金入りの楽観主義者だ。

 彼は軒下から膝の高さほどのプラスチック桶を引っ張り出してきて、竹籠の中身をそこへあけた。彼の獲物がぞろぞろと出てきた。

「先生、見てください!」

孔三元は私を信じていて、意見をもらいたいらしい。

「黒地に白い丸の蛇はいるかしら。黒地に白が一番いいのよ」

私は思い出しながら言った。

 すごい。桶の中には確かに八、九匹の蛇がいる。細いものは箸ほどの太さ、太いものは親指ほどの太さで、長さもまちまちだ。だが、すべて頭の部分が三角形をしており、これはこれらの蛇がみな正真正銘の毒蛇であることを示している。うち何匹かはすでに死んでいて桶の底で惨めに腹を晒しているが、生きている蛇は紫色の舌をぺろぺろさせながら、桶の縁に沿ってなんとか這い上がろうとしている。だが、孔三元は鉄のはさみを使って蛇の行動を封鎖している。這い上がろうとする蛇を見つけると、だいたい彼に見つかって落とされてしまう。

 不思議なものである。平素は邪悪にして恐怖でしかない蛇だが、このときばかりは、私は感動とともに見つめているのである。なぜかぜんぜん怖さを感じないのであった。それはおそらく、彼ら毒蛇こそが孔三元に生きる希望と勇気をもたらしてくれるからなのである。やはり、すべてはそうした気の持ちようから始まるのである。

「それで、先生。この蛇をどうするんでしたっけ?」

孔三元は板を持ってきて桶に蓋をし、手でその板を押さえつけている。

「見たところ、この中にはコブラはいないみたい。でも、ゆっくり探せばいいわよ。でも、黒地に白の蛇が二匹いたわ。まずはこの二匹を熱湯で殺してから、瓦の上に載せて弱火でじっくりと焙って乾かすのよ。それからそれを粉にして酒に漬けるの。もし晴れていたら。天日で干してもいいのよ」

「他には?」

「生きている蛇は、そのまま酒に漬けて薬酒を作るのよ。この薬酒は外用、内服どちらでも使えるの。死んでいるのはきれいに捌いて鶏と一緒に煮込んで食べるといいわ」

「酒に漬け込む奴は先に殺すんですか?」

「要らないわ。空き瓶に蛇を生きたまま入れて、そこに酒を注ぎ込むのよ。生きている蛇が酒で溺れ死ぬときに、自分の毒液を吐き出すわけ。それでそのまま十日から半月そのまま漬け込んでおくの。毎日その酒を患部に塗って、あとは朝晩一回ずつおちょこに半分ほど飲むのよ」

「なるほどなるほど。なかなか良さそうですね」孔三元はしきりに頷きながら、この蛇を鉄のはさみで一匹ずつ竹籠に戻している。「先生。やっぱりまだまだいけるじゃないですか!」

 子供の頃に小耳に挟んだりちらりと見ただけで、それほどわかるというわけではなかった。それに、この蛇で薬を作る方法は、本来ならリウマチの治療法なのであった。そういうわけで、私は子供の頃に何度も家で見たことがあったのだ。

「ねえ、孔三元。もうすぐ冬が来るわ。冬になると蛇は冬眠してしまう。もしあなたが実際にこの治療法を試してみて効果があったら、冬になる前になるべく多くの蛇酒を用意しておいた方がいいわ」

「なるほど。でも、冬になれば、蛇の穴を探せばいいので、もっと楽に捕まえられると思いますよ」

孔三元はさっと竹籠を背負った。

「でも気を付けて。蛇に咬まれないようにしてね。取り返しのつかないことになったら私の気持ちもただでは済まないわ。まずなによりも、安全第一。いいわね」

「わかりました。きっとそうします」

「蛇の肉はものすごく栄養があるから、たくさん食べても害はないわ。これは私が保証する。心配しなくていいのよ」

「そうですね。そのとおりです」孔三元は、私の秘方を授かって、まるで膨らんだ気球のようであった。嬉しそうに私の家をあとにしていった。


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