スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

シャン州をさまよった女流作家 曾焔の伝奇小説 龍鳳呈祥(きっといいことがあるさ)(2)

 
 霜に打たれた一輪の花!何といううまい表現であろう。花は霜に打たれ、すでに枯れてしまったのではないのか。私にはよくわからないが、私の鼻は少々ぐすぐすと音を立てている。私は泣きたいのかもしれない。ずいぶんと長いこと、私の苦しい情況に気を遣って言葉を掛けてくれる人に出会ったことがない。やっとこの、醜さでは天下無比なる孔三元の眼中の中にだけ、私という足の不自由な人妻が存在しているのか。しかしそれは、人の話題にも上らないような、一人の足が曲がった化け物としてではない。私は感激して、その感激によって涙が出そうになったのであった。

 この孔三元は人のいい面だけを捉えて、良心的に解釈することにかけては天才的であった。彼は私が暗く曇った表情でいるのを見ると、

「楊先生は本当に果報者だ。でも、あなたが苦しそうですがね」

 この一言には思いやりが詰まっていた。私は喉を引き締めながら、彼の優しい言葉に報いるように感激の笑顔をして見せたのだった。

 その後しばらく押し黙ったまま歩いたが、孔三元はもうその寂しさにすら耐えられないようだった。彼が口を開いた。

「先生。本当ですよ。老婦人のように髪の毛を巻いてしまうんですか。下ろした方がいいですよ。髪の毛を下ろせば、メーサロンで一番きれいな奥さんになりますよ!」

 孔三元は私を頭のてっぺんから足の先まで確認しているようだが、私は決して彼が言うほどではないのであった。だが彼は私の頭の髷を指さしてながら、なおもぶつぶつ言っているのであった。

「ああ、もったいない。これでは七十八十のばあさんの髪型ですよ。本当に、女性は長い髪が命ですよ。私を見てご覧なさい。私はこんなに醜いし、正真正銘の男ですが、髪の毛はこんなに長いんですよ。ほらっ!」

彼はそう言うと、頭を振って髪の毛を振り乱し、私を笑わせようとする。

 私は人から面と向かって褒められることに慣れておらず、それがたとえ、わざと大げさに言っているだけだと仄めかされたとしても、やはり耐えられないと思うたちである。結局は怯えたようにへらへら笑うという反応しかできないのであった。

 孔三元は私のこうした自分を押さえ込むような様子を見て、どうにもそれが不満であるらしかった。

「先生、あなたを見ていると、なにやら畏縮しているようですね。でも怖がることなんかないんですよ。人は颯爽と生き、才能があれば世界を股に掛ける。先生は他人に引けを取らないじゃないですか」

 私は彼の言っている意味がよくわかっている。彼の言いたいことはつまり、私はこんなふうに自ら卑下する理由は何もないということなのだ。そのとおりだった。私は確かに自分を卑下しすぎていた。だがそれは、私が生きてきた環境がそうさせたのであった。この地の思想はまるで十九世紀で止まっているようであった。足が不自由な一人の人妻が、仮に若く、端正であっても、彼らにいわせれば少しもロマンティックなことではなく、ただ不思議なことなのである。彼らにしても、善意的解釈だけで憶測することはできない。彼らはただ自分たちの基準に従っているだけだ。私を低く評価したところで、何の得にもならないのである。彼ら本来の口を借りれば、「さもなければただの行かず後家じゃないか。どうしてこんな小児麻痺のびっこ女と結婚しなければならないんだ」ということになるだけだ。

 私はこうしたことに非常に敏感なのであった。それゆえ、私はいつも心の中では一歩下がって、その境界線を越えないようにしていた。ややこしいことに巻き込まれないように、自分を守るために、私は常にこの境界線を越えることを自分に戒めてきたのだった。家庭の主婦でもなく、ただ仕事に勤しむだけの女に対して、出来るだけ距離を置くべきだという考え方もよくわかっているのだ。だからこそ、私は自分を卑下するだけでは飽き足らず、さらに自ら孤立するような生き方を選び、当然そうした孤立状態の殻に籠もることに、何の苦痛を覚えることもないのであった。

 しかしこの孔三元は自らを「大という文字すら書けない」無教養な一兵士に過ぎないといいながら、それでもこんなに寛容で友好的である。彼は真剣に心から人を褒め、そこには嫌らしい同情や安っぽい慰めの痕跡すらない。だからこそ、私は涙を流さんばかりに感激しているのであった。そうなのだ。私の心はすっかり枯れ果てていて、誰も私のことをわかってくれない。異国を漂う不幸な女にとって、善意から気に掛けてくれることは、何物にも代え難いことなのであった。


龍鳳呈祥(きっといいことがあるさ)(3)へ




関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリ
Facebook Page
検索フォーム
ブログ記事一覧
プロフィール

deguchik

Author:deguchik
中国語で書かれた作品から、北タイやビルマ(ミャンマー)シャン州、黄金の三角地帯(ゴールデントライアングル)の歴史や風物を読み解いていきます。
個人のFACEBOOKページ
このサイトのFACEBOOKページ

Contact/ご連絡

Your name/お名前:
Your E-mail/メール:
Subject/件名:
Message/本文:

RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。