シャン州をさまよった女流作家 曾焔の伝奇小説 枇杷樹下驚魂記(枇杷の木の下で)(8)

 
 謝さんは手を包帯で吊った姿で洗われた。彼は開口一番、

「聞いたところでは、おたくは最近家に入ってきた蛇を叩き殺したそうですね。違いますか?家に入ってきた蛇は殺してはいけないんですよ。殺せば悪いことが起こります。もしそうだと知っていれば、私だって屋根の修理を手伝ったりしなかった。それにほら、実際、私までこんな目にあってしまったでしょう」

 私は驚いて息が詰まりそうであった。だがどうしていいものかわからない。

「謝さん。あなたは家でゆっくり休んでいてください。その間の手間賃はお約束どおりお支払いしますし、治療費も私が責任を持ちます。いま手元にこれだけあるので、先にこれをお納めください」

今はただ、そう言って彼を慰めるしかないようであった。

 忠烈祠を出た私はまたしても眩暈に襲われた。何とか家にたどり着いた私は、そのまま具合が悪くなって倒れてしまったのであった。

 床に伏せること二十日間ほどであったろうか。私はもう少しで天国に到着の報告をしなければならなくなるところであった。

 おじさんとおばさんは、あの野枇杷樹の下に行って、熱心に何度も何度も少なくない紙銭を焚き、あの殺された大蛇に対して私のかわりに慈悲を求めた。彼らは何度も蛇の霊魂があの野枇杷樹に現れたのを見たと克明に語った。

 病が癒えて、メーサロンの心優しき人々が次々に現れては私に言った。私たちが買ったこの草屋が建つ土地は、かつて、基礎工事で地面を掘り返したときに、たくさんの遺骨が掘り出されたという。さらに、家の前のあの野枇杷樹はリス族やラフ族の幽霊がしょっちゅう出没するともいった。その幽霊をお祀りする人々は、あの野枇杷樹の根本にその幽霊を封じ込めるため、この野枇杷樹は実際のところ、決して縁起のいいものではないというのであった。

 野枇杷樹は、あのときの風雨で傾き始めていた。この木が倒れる前に、私たちは人に頼んで、この「幽霊の木」を先に切り倒さなければならなかった。

 切り倒された大木の芯は空洞になっていた。そして、切り倒した木の根元を見ると、木の下にはさらに、底知れぬ深さの穴があった。つまり、この穴こそが蛇の出入り口になっていたというわけらしい。

 夫は祥林さんと語らって便所の裏側の崖に登り、また別の穴を見つけた。彼らは人に頼んでこちら側の穴の出口を見張っていてもらい、自分たちは野枇杷樹の方の穴の入り口から桶いっぱいの熱湯を注ぎ込んだ。すると、穴の中から衝撃音のような音が響き渡ってきて、その音は、周囲で見ている人々を慄然とさせ、かつまた興奮させた。

 しばらくすると、便所の近くの穴の方から瓢箪よりも太そうな負傷した大蛇が、押し出されるように出てきた。周囲の人々は歓声を上げながらその蛇に向かっていき、山刀やら棍棒やらで一斉に攻撃し、その大蛇を叩き殺してしまったのであった。

 こうしてすべての荒唐無稽な言い伝えや噂に対する真相が明らかにされた。それからというもの、私たちの草屋には何事も起こらず、無事に暮らすことが出来るようになった。

 天災、そして人災もまた、誰しもが予測し得ないものなのであった。


【枇杷樹下驚魂記(枇杷の木の下で) 完】




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