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シャン州をさまよった女流作家 曾焔の伝奇小説 枇杷樹下驚魂記(枇杷の木の下で)(1)

 
 私たちの草屋の前に、半分枯れかかって中が空洞になっている古い木が立っている。メーサロンの人々は、この種の木を「野枇杷樹」と呼んでいる。この木は高さ七、八丈ほど、太さは人間二人がかりで抱き合うほどの太さがあり、枝はさまざまな方向に延びきっていて、全体には蔓が這っており、枝の上にはさまざまな鳥が巣を営んでいる。

 また、その木には何百というぼこぼことした瘤がついていた。この瘤をじっくり眺めて、想像力をたくましくしていれば、この瘤の一つ一つが無数の恐ろしい怪物のようにも見えてくるのであった。一目見て、あるものは髑髏のようであったり、またあるものは悪龍のようであったり、さらには恐ろしい表情をした妖怪変化の類にも見えてくる。つまり、この木を見る者は、往々にして「邪門」の雰囲気を感じ取るのであった。

 私たちはこの木に針金をくくりつけ、衣服を干している。ある日のこと、私は家のひさしの下で本を読みふけっていて、考え事をしながらふと頭を持ち上げると、三、四丈ぐらいの高さの位置にあるその木の横穴に、何か光沢のあるものが日の光を受けて蠢いているのが見えた。その形状は、竹で編んだ果物籠のように見えるが、おそらく蛇ではないだろうか。私はそう思うとさらに観察したくなり、私は好奇心から三百度の近視眼を細めた。そして、その木の上の方に焦点を合わせて、頑張って眼を凝らしていくと、わずかながら、ちらちらと、その蛇らしき物体が蠢いているのが見えるようであった。

 私はさらにはっきりと見たくなったので、梯子を掛けてよじ登って見てみることにしたが、その穴までは梯子を掛けてもまだ距離があって、私は頭を上に向けて上の方を覗き込んでみた。すると、なんということだろう。それは木の瘤がそう見えるというようなものではなく、まさしく瓢箪ほどの太さの巨大な生きた蛇なのであった。その蛇は頭をぐっと伸ばし、上に向かって動き出したかと思うと、巣に戻ってきた鳥に食らいついて、そのままぱくりとひと飲みにしてしまった。

 私はびっくりして思わず梯子から飛び落ちてしまった。私の四肢はすっかり硬くなって麻痺しまっている。夫の|楊林《ヤンリン》は授業があるので、まだ学校から戻っていない。娘は隣家の友達と遊びに出掛けている。私はなんとか堪えて起き上がり、ほうほうの体で、我が家の向かいでソバを売っているタイ人のおばさんの店の前にたどり着き、息もばらばらな状態で彼女に言った。

「おばさん、おじさんたちを呼んで来て。あの木の穴に蛇がいるの。ものすごく大きい蛇よ。太さが瓢箪の切り口ほどもあるわ!」

 このあたりはあまり水の便がよくないので、四、五軒の家しかなかった。学校からそう遠くない場所にあったのだが、賑やかさとは縁遠い感じであった。それでも何人かの隣人たちが駆けつけてきた。そしてその蛇だが、木の穴から這い出てきたところであらためて見てみると、三、四丈ほどの長さがあった。木の枝の上にとぐろを巻いて居座っており、それに驚いた小鳥たちが騒がしく喚きながら四散するように飛び去っていった。

 メーサロンは標高の高い不便な山の中にある山塞だが、開発されてからすでに十数年の年月が過ぎている。したがって、これほど大きな蛇を見ることは今ではとても希なことであり、隣人たちもざわついている。その大蛇は、黒字に黄色の斑点模様、真っ白な下腹は半円形の鱗で埋め尽くされている。大蛇はゆったりと梢にとぐろを巻いており、我々を見下ろすような高い位置から俯瞰しているが、下にいる我々などはまるで眼に入らないといった傲岸な様子で、さらに、ここから去ろうというような意思を一切見せない。


枇杷樹下驚魂記(枇杷の木の下で)(2)へ




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