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シャン州をさまよった女流作家 曾焔の伝奇小説 芳鄰(佳き隣人)(7)

 
 私の心の中は申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた。考えが足りない一時的な衝動によるものとはいえ、私は結局彼ら一家を追い立ててしまったようなものであった。これ以降、夫が夜通しの雀戦に出掛ける夜は、またしても一人でこの長く恐ろしい夜を過ごすことで、私はさらに後悔の念を深めていた。それどころか、もし十キロの干し肉で引っ越しを思いとどまってくれるのであれば、むしろ積極的に差し上げたいものだとさえ思うこともあった。

 だが、一家があの家を離れたあとも、私の家からは依然としてものがなくなっていた。たとえば、私たちが飼っている鶏は、夜になると家の裏側に積んである薪の上に止まっているのだが、このところ、鶏が日に日に太ってきていて、ある日私たちが映画を見に出掛けたある夜、鶏は何者かに盗まれてしまったのであった。

 そして、祥林さんの奥さんが教えてくれたのだが、いつも決まって鶏が盗まれたその次の日に、鄒冲の家では鶏を締めて食べているというのである。毎回毎回このように偶然の一致が重なるものだろうか。

 ようやくながら私にもわかってきたことがある。この鄒冲という男はけっして善人ではないのである。彼はあちこちで借金をしては、それを返さずにいた。毎日のように祥林さんの家に現れて、好きなように人の食べ物をつまんで食べていく。もらいタバコにしてもそうである。こうして彼は、周囲から敬遠されているのであった。

 祥林さんの家の鶏もしょっちゅう姿を消しているし、鄒冲の隣家の大叔母さんの家の鶏もまた、一日一日と少なくなっていく。この隣家たちはみな口には出さずともはっきりわかっていた。だが、現場の証拠を押さえることができないので、仕方なくこの情況に耐えるしかなかったのである。もし、あの鄒冲を誣告で貶めたとなれば、あの「死んでもお喋りが止まらない」口で、ずた襤褸になるまで呪い殺されるであろう。

 そうして、このあたりに住んでいる人々はみな鶏を飼わなくなっていったし、鶏が逃げてもそのままにしておいた。自分の飼っている鶏が、この鄒冲の土鍋に入っていくのを黙って見ているのは耐えられなかったからである。

 だが私は、この鶏泥棒にしっぺ返しを喰らわせる妙計を思いついた。

 ある土曜日の夜、私はもうすぐ卵を産みそうな雌鳥一羽を、故意に薪の上に放して罠を張り、何食わぬ顔で子供を連れて、祥林さんの奥さんと映画を見に行った。

 映画を見て家に戻ると、果たしてその肥った鶏は「神秘的に失踪」していた。その夜は、夫も例によって貪婪なる雀戦に血道を上げており、まだ帰宅していなかった。私は表には出さなかったが、子供のように嬉しくて嬉しく仕方がなく、あまりの興奮に夜の恐怖すらも忘れ、いつの間にか眠ってしまい、気がついたらいつのまにか朝になっていたのであった。

 そして翌朝、ちょうど口をすすぎ終わった頃であった。警備部が人をよこして、私に出頭するように連絡してきた。だが今ひとつわからなかったのは、一体何をしたのであろうかということである。

 そして警備部に着くと、一人の警官が私を手招きして、彼の前に座るように言った。彼はひとしきり考えたあと、持って回った口ぶりで婉曲に語り始めた。

「あの、先生は教師ですよね……。ですから、話すことにはやはり証拠が必要ですよね……。そうでないと、いろいろと悪い影響が出るんですよ……」

 私は焦れて思わず聞いた。

「一体何のことなんですか?」

 その警官は文書ファイルから一枚の紙切れを取り出してきた。わたしはその紙切れを見て笑いが堪えきれなくなってしまった。そして確かめた。

「それはもしかして鄒冲さんが持ってきたんじゃありません?」

「そうですよ。先生は、先生がこれを書いたと誰かに言われても、否認なさらないんですか?ですが、たしかに先生の仰るとおり、さきほど鄒冲が来まして、先生が彼を誹謗して、その上誣告までしていると通報してきたんですよ!」


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