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シャン州をさまよった女流作家 曾焔の伝奇小説 芳鄰(佳き隣人)(5)

 
 私たちの家とヤングードゥーの家の間は、竹垣で隔てられておらず。ただ、草むらだけが境目になっている。鄒冲の言い方がいかにもそのとおりという感じで、しかも話し方には躍動感があったため、私は怒りを抑えきれなくなっていった。頭が真っ白になり、思わず起ち上がった。

「一度ならず、よくもここまで堂々とやってのけたものだわ。私の方から彼のところへ出向いていって、二度と人の家に忍び込んできて、人様のものに手を出したりしないように、私がきっちり搾ってやる」

 私はそう言いながら鄒冲を連れてヤングードゥーの家に乗り込んだ。彼らがこの家に越してきてから一月以上経つのだが、こうして訪れるのは初めてであった。申し訳程度にくっついている入り口の扉を押し開けると、そこには、満足に着る衣服もない、おそらく八歳以下だが年齢もまちまちの四人の子供たちが、すっかり汚れている欠けた皿を取り囲んで、手掴みで食事をしているところであった。屋内には家具らしい家具もなく、炊事用具と思われる割れたり欠けたりしている鍋や皿の類が床に転がっている。

 だが、気色ばんで乗り込んではみたものの、眼の前に広がる凄惨で汚れきった情景に、私は思わず躊躇してしまったのであった。さらに前に進むことは気が引けたし、心の中では来るべきではなかったという後悔の念が湧き上がってきていた。

 だが鄒冲は、

「こらヤングードゥー。この泥棒野郎。盗んだものをさっさと出せ」

と気勢を上げて怒鳴り立てている。

 子供たちは驚いて食べ物を掴む手を止め、みな眼を見開いて怯えながらこちらを見ている。

 「もういいわよ鄒さん。帰りましょう」

私は振り向いて帰ろうとした。

 しかし鄒冲はそんな私に構わず続けている。

「こんなでたらめなことがあるか。盗まれたものが出てくるまで、今日は何があっても帰らないぞ」

彼はさらに声を張り上げている。

「ヤングードゥー。死んだふりなどしている場合か。貴様が出てこないなら、こちらから奥へ乗り込んでいくぞ!」

 すると、垢まみれの顔にぐちゃぐちゃの髪をした四十歳ぐらいのリス族の女が、おどおどしながら奥の部屋から出てきた。

「なんでしょうか。主人ならいませんが」

どうやらこの女は、ちょうどベッドに横たわって阿片を吸っている最中のようであった。それで、阿片が吸い終わるまで出てこなかったようなのである。

 鄒冲は激しい口調で言い立てている。

「おまえら自分のやったことぐらいわかっているだろう。この糞リス族め!度胸だけは据わっていやがる。先生の家から十キロもの牛肉をかっぱらいやがって。さっさと干し肉を返せ。そうでなければ、わしは貴様らに遠慮などせんぞ!」

 私は心の中ではさっさとこの場をあとにしたかったし、鄒冲がさらに話をややこしくすることを恐れていた。しかし、ここにいて踏み込まなければ悪者を勇気づけるだけであるとも考えた。だが一方で、引っ込みがつかなくなって、自分が勢いよく乗り込んできてしまったことも後悔し始めている。なんと軽率なことをしてしまったのか。

 「そんなことありません。私たちは先生の家の干し肉を盗んだりなんかしていません」

ヤングードゥーの妻は苦しそうに説明している。あまりの恐れに彼女の眼から涙が流れ始めている。


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