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シャン州をさまよった女流作家 曾焔の伝奇小説 芳鄰(佳き隣人)(4)

 
 さてこの鄒冲だが、彼は痩せてひょろ長い体躯で、顔も肉を削り取ったようにがりがりに痩せている。年齢はすでに五十歳以上だろうか。この男はかつてもっと若い頃に阿片の密売で荒稼ぎをして大金持ちになった。だが、その後阿片密売に対する取り締まりが厳しくなり、それからというものまったく振るわないのであった。

 一日中何もすることがなく、手持ち無沙汰なので、ひまさえあればでたらめな無駄話を吹きまくっていて、人々から嫌われていた。日頃は、愛人に小商いをやらせて、その売り上げで生活を維持している。家が貧しいのは誰の目にも明らかなのに、昔の癖が抜けずにいつも高いところから人を見下すような態度を好んで取っている。およそ、他人と三言話せば、すぐに昔日の富の多さを吹き始める。

 我が家からメーサロンの市場まではずいぶんと距離があった。私は炊事のたびに市場に行かなくても済むように、また改めて十キロの牛肉を買ってきた。漬け込んでから干し牛肉にして、それを料理して食べるのである。二度と盗まれないために、私が学校へ行く前の時間だけ外に干して、出掛けるときは台所に肉をしまって鍵を掛けた。

 ある日の午後、夫は授業がなかった。彼がベッドに寝転んで大好きな武侠本を読んでいるのが見えた。ちょうどいいので、そのときは牛肉を干したまま出掛けることにした。だが、家を出る前に、

「あなたがどこにも出掛ける用事がないんなら、牛肉は干しっぱなしにしていくからね。もし出掛けるときは、牛肉はしまってから出掛けてね」

と一声掛けていった。

 夫は面倒くさそうにふんふんと生返事をして、またすぐに大好きな武侠本を読み始めた。

 学校から戻ってくると、家の鍵がかかっている。夫は「三人いるけど一人足りない(訳注、麻雀は四人で打つ)」ために呼び出されたに違いない。私は先に庭の方へ回って中を覗き、牛肉が干したままになっていないか確かめた。夫は今日ばかりは善良なる心を発揮して、私の言付けを覚えていてくれて、牛肉を中にしまってくれたようであった。雀戦に出掛けたことに対する怒りがないわけではないが、それによって多少は怒りも静まったのであった。だが、台所に入って中を見回すと、あの牛肉が見あたらない。なにやら様子がおかしい。あの十キロの牛肉はまたしても人に盗まれてしまったのではないか。

 干し肉の盗難はこれで二度目である。私はすぐさま怒り心頭に発した。この怒りをどこにぶつけようかと苛々しているときに、ちょうど鄒冲が家に顔を出したのであった。彼は満面の怒りを見て、

「どうしたんだい。口を尖らせて。楊林と喧嘩でもしたのかね」

「楊林の博打狂いが悪いのよ!家を出るときには牛肉をしまってから出掛けるようにとあれほど言っておいたのに。誰かが麻雀に誘いに来ると、自分の姓名すら忘れて飛び出していくような馬鹿男なのよ。牛肉をしまわないで出掛けたから、また盗まれてしまったわ」

私はぷんぷんであった。

 鄒冲は同情しているような感じであった。

「あいつは何事にも不注意が甚だしいからな。それに、そんなにたくさんの牛肉なら、値段だって何百バーツもするだろう。人に盗まれるなんてちょっと惜しいな」

彼はそう言うと、声を低めて話し出した。そして、我が家の裏手の方を指さして、

「あのヤングードゥーが盗んだに違いない」と言った。

 私は半信半疑の眼差しで鄒冲をちらりと見た。だが彼はさらに言うのであった。

「間違いない。今さっきおたくの家の裏手の草むらに、あいつが慌てて逃げ込んでいったのが見えたんだから」


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