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シャン州をさまよった女流作家 曾焔の伝奇小説 人蜂大戦(5)

 
 夫の顔の腫れはだいぶ引いてきているとはいえ、治りきっているとはいえない。彼はずっとぶつぶつと何か言っている。

「てめえら、おれを十一カ所も刺しやがって。おれ様が子孫を根絶やしにしてやる」

 ごま油で黄金色にこんがりと揚がった蜂の子は、大皿に盛られて食卓に登場した。夫は早くも酒をつぎ始め、お爺さんと祥林さんはすでに箸を手にしている。

 私と娘はどうにもこれを食べる気になれないので、傍らで眉間に皺を寄せながら彼らの宴を眺めるしかない。日頃から私は虫が嫌いである。とくにこうした柔らかくてもこもこ動く類の虫については、なおさら食べさせられたくないものである。

 夫は酒を一口含むと、蜂の子を箸でつまみ上げ、ちょうどそれを口に運び込もうとしているときだった、昆明にいたときに、私は彼が蝉の幼虫を食べるのが不愉快でたまらなかったことを突然思い出した。

「楊林、食べないでよ、食べないでよ、ね。お願いだから食べないで」と言った。

 夫は一瞬躊躇したようだが、忿懣を込めて言い返した。

「ふん。おれはこいつらのような邪な連中を許さんのだ。毒をもって毒を制すだ。ざまあみろ!」

そして彼は口の中を蜂の子でいっぱいにして、それを咀嚼しながらまだ何か言っている。

「てめえらが十一カ所も刺したんだからな。おれはてめえらの子孫を全部食い倒してやるんだよ!」

 お爺さんと祥林さんは夫にもましてこの蜂の子に眼がない様子であった。

「怖いことなどあるもんか。蜂の子は山の珍味のなかでは最も滋養強壮によいとされているし、最高の酒のつまみなんじゃよ。さあ、あなたもお食べなさい」などと言っている。

 彼らは三人でその黄金色にこんがり揚がって大皿に盛られた蜂の子を取り囲み、杯を片手にこれをつついている。そしてそれはもう無上の喜びといったふうであった。

 タイビルマ国境地帯では多くの人々が、こうした昆虫の幼虫を美味珍味と考えている。とくに暑い夏がやってくると、市場のあちこちでこうした虫を売っている。成虫もあれば幼虫もあり、その様子は百花繚乱、こうした例は枚挙にいとまがない。

 たとえば、蝉、牛糞虫、コオロギ、バッタ、カブトムシ、マメ虫、竹虫、蟻……などなど、名前もわからないような虫まで売られていて、小さめの竹籠に入れられたそうした虫たちはこの山塞のあちこちで見られるようになる。私たちも、現地の土着民が、いったいどこから、そして、いかにしてこうした多くの虫を捕まえてくるのかが不思議であった。そしてこれらの虫が売れ残る心配も要らない。値段に到っては肉よりさらに高いのにもかかわらずである。甚だしきは、羽根をもぎ取ったゴキブリのような虫までも口にする人がおり、それを口の中で咀嚼していると、白みがかったその内臓が口の周りに染み出してきて、私は吐き気を覚えるのであった。

 さらに、一種の羽蟻の仲間のような蟻も売られていて、この蟻は鼻を突く独特の匂いを分泌する。この羽蟻でさえも、また少なくない人が命の如く愛して止まないものである。老人たちが麻雀をしながら、灯りの近くに集まってきたこうした羽蟻を手で捕まえてはさっと食べてしまう。想像したくもないが、人には想像できないような、たとえようのない滋味があるものらしい。

人蜂大戦(6)最終回へ




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