シャン州をさまよった女流作家 曾焔の伝奇小説 人蜂大戦(4)

 
 夫は恨み骨髄といった感じで、仇を取らなければ気が済まない。蜂に刺されたその痛みで、ほぼ一晩中夜もおちおち寝ていられなかったので、さらに怒り心頭に発している。次の日の朝に東の空が明るくなってきた頃、彼はすでに待ちきれなくなっていそいそと起き出していた。いつもなら、午前の授業がない日などは昼ご飯の時間になってようやく起き出してくるのが普通なのに。彼は灯油を一瓶取り出してきて、さらにどこからともなく雨衣を引きずり出してきた。そしてお爺さんと祥林さんを起こしに行った。

 日が高くなってきて丘の凹みを照らした。彼ら三人は意気軒昂、士気高々に丘の麓へ向かって行った。いよいよ人間と蜂との壮絶な大戦争が始まるのである。

 窪地には蔓草や雑草が生い茂っている。彼らは注意深く草むらをかき分けて進んだ。そして一本の木のそばに来て上を見上げてみると、なるほどすこぶる大きな蜂の巣が木にくっついている。その蜂の巣は、十三層になっていて一層ずつ大きくなっていくのだが、その最も小さな層でも料理皿ぐらいの大きさがあり、大きい部分に到っては洗面用の盥ほどもある。お爺さんが言うように、この種の蜂が夜にかけて出没する習性があるのなら、いまごろ蜂どもはこの巣に帰って寝ているはずである。

 彼ら三人はこの様子を見て大いに喜んでいた。そして興奮しながら蜂の巣の下に枯れ草枯れ枝を堆く積み上げ、灯油をかけて点火した。

 火に燻されて無数の蜂が驚いて飛び出してきた。こうした夜蜂は昼にはあまりものがよく見えないのか、わりとおとなしいものであった。だがそれでも彼ら三人は万一の事態に備えて雨衣を着用して、なおかつ風の来ない場所にその身を避けている。

 多くの蜂が巣から火の中に墜ちて死んだ。それ以外の蜂は命からがら慌てふためいて飛び去り、どこへ飛んでいったかもわからない。

 ひととおり燻し、彼らはすべての蜂が飛び去ったことを確認し、それからそそくさと出て行って、いとも簡単に蜂の巣を手中に収めた。やがて驚くべき戦果を上げて凱旋した。

 私と娘は遠くから興味深くその様子を見ていた。大きな大きな蜂の巣。それぞれの層、ほとんどの穴に蜂の子が詰まっている。蜂の子は白くぷりぷりと太っており、一匹ずつ巣の格子の中に収まってもこもこと動いている。私と娘はその様子を見て思わず鳥肌が立ってしまった。

 そして彼ら三人はとてもうきうきと嬉しそうにその蜂の子をざるの上にあけると、それは山のようになった。よしよし、よい子だ。ざるいっぱいにたくさんいる蜂の子。そしてこの三人の貪食家たちは、もうそれだけで飲み込んでも飲み込みきれないほどの唾液が出てきている。台所へ飛んで行って支度を始め、鍋を火にかけると、そこにたっぷりの油を注いだ。そして蜂の子をその油で揚げて食べようというのである。

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