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シャン州をさまよった女流作家 曾焔の伝奇小説 人蜂大戦(3)

 
 しかし、生活の中のほとんどの出来事に対して、我々は常に気を張っていなければならないということはないのである。いってみれば、同情は同情、ユーモアはユーモアとして受け止めることができるからこそ、苦しい生活の中にも楽しみを見いだせるというものであろう。

 とりあえず私は家に戻った。だが、私たちだって、別に彼の痛みや苦しみを忘れていたわけではない。

 消毒用のアルコール、脱脂綿、萬金油、ピンセットなどを探してきて、夫に刺さっている蜂の毒針を抜く作業を手伝うことにしたのだ。

 「医者に診せる必要はないんですか?」

私はお爺さんたちに聞いた。

 「大丈夫、大丈夫」

お爺さんはこうした経験があるようだ。

「まずはとにかくアルコールで洗ってな、それから萬金油を塗っておくんじゃよ。それでしばらくおくと、やがて腫れも引いてくるじゃろうて」

 細かく数えていくと夫は十一カ所も刺されていた。それに、腕には一匹の蜂がまだくっついていて、お尻の方は皮膚に差し込まれたままである。一度刺したら身体を離すこともできず、まさに命懸けで頑張った末に、ここに屍をさらしているといった感じであった。

 夫はこの蜂にあらん限りの罵り言葉を投げかけて、掌ではたき落とした。蜂はばらばらになって潰れてしまった。

 お爺さんはそのばらばらになった蜂の死骸を拾い、掌にのせてじっくりと眺めながら言った。

「この種の蜂は、夜蜂というんじゃ。専ら夕方になってから動き出す種類じゃな。なので昼間はほとんど見ることがないんじゃがなぁ。それに、おかしいな。おたくの土地に生えていた雑草は全部刈り取ってしまったはずじゃないか。どうして蜂の巣が残っているんだ?」

 夫の楊林は恥ずかしそうに照れ笑いをしながら言った。

「あのう、実は、丘の麓の方に窪地がありまして、そこの草はまだ刈っていなかったんです。それで、私はそこの茂みに野糞を垂れに行ったんですが、ちょうどしゃがみ込んだところで奴らが出てきたんですよ」

 私たちの草屋の中はまたしても一陣の爆笑の渦に包まれた。夫は自分がズボンをひっ掴んで慌てふためく自分の姿を思い出したのか、自分の滑稽さに笑い始めている。

 お爺さんはにこやかに宣言した。

「よしわかった。それでは、この奇縁に感謝して盛大な宴を張ろうではないか。明日はみなでその蜂の巣を取りに行き、蜂の子を油で揚げて酒の肴にしてやろう!」

 楊林もそれを聞いて喜んでいるが、同時に恨みと喜びが交錯しているのもわかる。

「あのくそったれの蜂どもめ。おまえらおれを十一カ所も刺しやがった。こんどはおれがおまえらのがきどもを平らげてやる!」

 この男は王澤(中国の著名な四コマ諷刺画家)の漫画の、とある主人公のようである。ひとたび犬が彼を噛めば、彼は必ず犬を咬み返すという種類の人間で、報復心が異様に強いのであった。


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