スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

シャン州をさまよった女流作家 曾焔の伝奇小説 断魂辣(魂が消し飛ぶ唐辛子) (6)

 
 「浸し唐辛子だと?おまえまさかそんなものを使ってつけだれを作ったのか?」夫の語気は、まるで殺人の証拠を捉まえたかのようであり、続いて出てくる言葉はまるで尋問のようであった。

 「それで、そいつを何本入れたんだ?」

 「五本よ。ぴったり五本。それ以上でもそれ以下でもないわ!」

 私は何事もなかったかのように、淡々と状況を説明した。片手には子供を抱きながら、もう一方の手では、そのままにしておくとまたつい手が出てしまいそうなこの唐辛子のつけだれを下げ、そのまま隣家が飼っている豚のための残飯桶に捨てた。

 「五本だって!浸し唐辛子を五本も入れてつけだれを作るなんて、おまえはおれを殺す気か!」

 夫はまだ吼え足りないようである。

 「だいたい、自分で作ったものをちゃんと味見したのか?どうして自分が食えるぐらいに抑えなかったんだ。本当に死ぬほど辛かったんだぞ。飲み込まなかったからよかったものの、ほとんど硝酸水と同じような味じゃないか」

 彼の話を聞いていると、まるで以前本当に硝酸水を飲んだことがあるかのような口ぶりであった。

 「そんな言い方しなくたっていいでしょ!暴れたり喚いたりしないでよ!私が作ったんだから、すぐに味見したに決まってるじゃないの。もっとも、反対に、辛すぎて癖になりそうだったわよ。本当に、辛くて辛くて癖になりそうだわ!このぐらいすごい唐辛子を食べてこそ、もう二度と唐辛子なんか食べたくないと言えるのよ。博打で家産を使い果たすのも、阿片で身体がぼろぼろになるのも、同じなのよ。最初にたっぷり苦しみを味わっておけば、そんな恐ろしいものには二度と手を出そうとはしないんだわ!」

 たしかに、こうした強烈な刺激には、あたかも最後の一線を越えてしまったような、とても不思議な後味があったのだ。

 夫は恨めしそうに私を睨み付け、そのまま外へうがいをしに行ったようである。

 晩ご飯を済ませ、私は台所の後片付けをしていた。隣家の|宋《ソン》さんが豚に食べさせる米のとぎ汁ももらいに来た。私たちはひとしきり世間話などをして、各々の家事に戻っていった。

 宋さんは米のとぎ汁を持って帰り、それを豚の飼料に混ぜて豚に食べさせるのである。彼女は三、四匹の中ぐらいの大きさまで育った豚を飼っている。彼女は必死にこの豚を育てて大きく太らせ、草屋を増築しようとしていたのであった。

 豚たちは、飼料が放り込まれると見るや、例によって先を争うように貪り始めた。半分ほど食べ終わったころだった。一匹ずつ頭を震わせ始め、まるでヒステリーのような鳴き声を上げ始めた。それはまるで屠殺される直前の鳴き声のようであり、何の当てもなく、でたらめな方向に走り始めたのであった。近所の|字《ヅー》さんも駆けつけ、竹竿で豚を突き、大声で怒鳴り続けているうちに、豚は静かになってきた。

 そのうち一匹がとても大きな声で鳴いたかと思うと、命懸けで暴れに暴れて駆け回っていた。そのさまはまるで何かに取り憑かれた豚のようであった。騒ぎが一段落すると、別の一匹が、こんどは体力を使い果たしたかのように身体を支えきれなくなって、もしくは痛み苦しみを抱えているかのように地面にばったりと倒れこんでしまったのであった。そしてそのまましばらくのたうち回っているうちに、口から泡を吹き始めた。吐息がぜえぜえと大きく、そして荒くなっている。


断魂辣 (7)へ





関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリ
Facebook Page
検索フォーム
ブログ記事一覧
プロフィール

deguchik

Author:deguchik
中国語で書かれた作品から、北タイやビルマ(ミャンマー)シャン州、黄金の三角地帯(ゴールデントライアングル)の歴史や風物を読み解いていきます。
個人のFACEBOOKページ
このサイトのFACEBOOKページ

Contact/ご連絡

Your name/お名前:
Your E-mail/メール:
Subject/件名:
Message/本文:

RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。