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霊犬蒙迷科(霊犬マウンミークー) (4)

 
 マウンミークーは敏捷で機知に富んだ犬で、いつもせわしなく動いているように見えながらも、実際はいつも入り口の内側に陣取っていて、なにかががさっと動くとさっと耳を立てて周囲の音に注意深く耳を立てた。とくにうるさくでたらめに吠えるということもなく、もし異状がなければすぐに戻ってくる。そして私たちを見つめながら尻尾を振って、驚き恐れるに値するような異状がなにもないことを伝えるのであった。私たちはこうして知らず知らずのうちに、何度も恐怖を克服することができたのだ。

 私たちはこうして山林での生活に馴染んでいった。父は嬉しそうにマウンミークーを軽く叩きながら言った。

「こいつがいなければ私の生活は成り立たないな。私にしても、怖がるおまえたちを置いて、おちおち仕事に出ることもできないしな」

 ある日、私は弟を連れて山の小川へ水浴びに行った。もちろん、いつものようにマウンミークーも一緒だ。

 マウンミークーは楽しそうに遊びながら私たちの前を歩いている。道端で偶然蝶が止まるのを眼にすれば、すぐにその蝶を追い掛けてふらふらとついて行ってしまう。捕まえようとしているのであった。そして蝶がその気配を察してすっと飛び去ると、マウンミークーは首を上げて私たちを見つめる。捕まえられなかったことがとても残念な様子で、鼻をくーくーいわせながら私たちを見ているのだ。そして前足をあげて顔を掻く動作がまるで照れ隠しのように見えて、私たちは大いに笑ったものだった。

 渓流の河辺に着くと、私たちは洗い立てのきれいなサロンを草の上に敷いて、そのまま水へ入っていった。マウンミークーはそのあたりに伏せてうたた寝をしている。

 私は水浴びを終えて岸に上がると、マウンミークーは嬉しそうに駆け寄ってきて私をぺろぺろ舐めた。私が背中を軽く叩き、サロンを取りに行こうとしたとき、急にサロンに向かって吠えだした。

 「こら、咬まないの。咬まないの!」

私は軽く叱った。私が身に付けている濡れたサロンををしっかりと咬んでいる。そして、咬んだまま後ろに引っ張ろうとしているようだ。

 叱っても言うことを聞かないので、これは足蹴にするしかないかと思っていたとき、こんどは急に私から離れて、こんどは草地に敷いてあるサロンの方を銜えて走り出した。

 私がふと眼を遣ると、そこに箸ほどの長さの大ムカデがサロンの陰から出て来て、私は驚きのあまり大きな叫び声を上げてしまった。

 その声を聞いた弟が急いで駆けつけてきて、近くにあった枝を拾ってその大ムカデを叩き殺したのであった。

 私はその傍らに立ち尽くして、恐怖に手足も凍り付いたようで動きたくても動けない。全身が腑抜けになったようであった。

 マウンミークーはその大百足を鼻で臭って、さらに前足で小突いている。それから顔をこちらに向けて私を見た。その顔はまるで、「怖がらないで。もう死んでるから」と言いた気であった。


霊犬蒙迷科(霊犬マウンミークー)(5)へ続く


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