霊犬蒙迷科(霊犬マウンミークー)(2)

 
 
 夜間、こうして鬱蒼とした原生林に囲まれた竹の掘っ立て小屋で父の帰りを待っていると、物の怪が発したかのような奇怪な声や大きな物音を耳にする。私と弟は怯えながら二人しっかりと抱き合い、そのまま小さく縮み上がって竹の寝台の上に寝ている。

 そして風が吹き、草が動いただけで、全身の毛が逆立つほどの鳥肌になって、本来なら口から出るべき声すらもぐっと飲み込んでしまうのであった。こんなふうに時間が過ぎていくうちに、やがて睡魔に負けて眠ってしまうのだ。

 ある夜のこと、突然一陣の暴風が巻き起こった。原生林全体がこの暴風に呼び覚まされたように揺れ始め、その物音はまるで無数の妖怪百鬼が家の外で咆哮してるさまを想像させた。間を置いて、おそろしいふくろうの鳴き声が遠くから幾度となく響いてくる。私と弟の恐怖は、それだけで頂点にまで登り詰めてしまうのであった。

 さらに一瞬ピカッと雷が光り、まばらな竹の壁の網目を通して、その閃光が小屋の中に差し込んだかと思うと、ドカンと落ちる大轟音があとに続いて響いてくる。この竹の掘っ立て小屋は、暴風が思いのままに引き摺り回しているかのように揺れ、私と弟はあまりの恐ろしさに泣き出してしまうのであった。

 やがて空が白んでくるとともに、この恐ろしい暴風雨も止んでくれた。

 父が戻ってくると、私たちは彼の懐めがけて飛ぶような速度で掛けていった。父もまたこんな日には特に優しく私たちを抱きしめてくれる。

「お父さん!」

私たちは喜びと慰めが入り交じった声で父に話しかけたものである。

「昨日の夜の雨と風は本当にすごかったんだよ!」

 こうした苦難の日々は、私たちにいろいろなことを教え込んでいったのだが、それにつれて、ひいひい泣きながらとても怖かった一夜の経験を父に訴える、というようなことも徐々になくなっていった。疲れて帰って来た父を思いやって、父が少しでも気持ちよく過ごせるようにと、気遣う余裕すら生まれるようになった。

 父は背負っていたリュックサックを下ろしながら言った。

「父さんはおまえたちのために仲間を一人連れてきてやったぞ。こいつはとても度胸があって、幽霊を怖がったりなんかしないんだ」

 私たちは顔を上げて、父がリュックから取り出した、毛むくじゃらで丸々と太った灰色の子犬を見ていた。

 この子はやっと乳離れしたばかりの子犬で、父がカチン族に頼んで譲り受けてきたのであった。


霊犬蒙迷科(霊犬マウンミークー)(3)へ続く

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