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シャン州をさまよった女流作家 曾焔の伝奇小説 藍色的枸閙花(ゴウナオの青い花)(8)

 
 
 吠える犬たちの声は、草屋の中にいたアカ族を驚かせ、その山塞のほとんどの村民と思えるアカ族たちが駆け出て来た。彼らはみな突然の珍客に対して、人の良さがしみ出るような暖かい仕草で、私たちを招き入れてくれたのであった。

 あっという間に山塞中が喧噪に包まれ、牛、馬、鶏、豚、山羊など、ありとあらゆる声が村中に湧き起こった。まるで私たちの急な来訪が、この原始的な山塞に大きな事件を巻き起こしたかのようであった。

 私たちをここまで連れてきてくれた例のアカ族男性は、走り出てきたこの村のアカ族の人々とあれやこれやと話している。この村のアカ族の人々の方はそれを聞いて色を失いつつも、気を失っているヘンリーさんを恐る恐る見つめている。そしてこの村の隅の方を指さして、私たちにすぐそちらへ行くように促した。

 その村の隅には、小さな草屋が並ぶこの村の中でもひときわ小さく、低い草屋が建っている。

 だがヘンリーさんは体が大きく、その草屋の中に入れることはできないため、私たちは仕方なくその前の空き地に彼を仰向けに横たえたのであった。

 アカ族の村人が数名、その小さな草屋の中へ入っていった。私たちは入り口のあたりまで歩いて行って中を覗いてみると、乾いて皺くちゃになったような老婆が一人、小さく固まって座りながら、ビンロウの実を噛んでいた。

 彼女の姿をよく見た私たちは、まず、その姿に驚かされた。この乾いて皺くちゃになったような老婆の顔はまるで骸骨の如きであって、真っ黒くなった肌には所々斑点がある。もし彼女がこうしてビンロウの実を囓っているところを見なければ、その姿はまるでミイラのようにしか見えなかったであったろう。血のように真っ赤なビンロウの汁が彼女の口を赤く染めているのだが、その様子によって、彼女からは異様な妖気が漂ってくるようであった。彼女はアカ族の黒い民族衣装を身に纏い、頭にもアカ族の装飾品をぶら下げている。彼女は相当に年老いているはずだが、実際の年齢を言い当てることはまず不可能であった。

 だが、まるで妖怪変化の類にすら見えてくるこの一人の老婆を見たときに、私はなぜかほっとしたのであった。私が思うにヘンリーさんは死なない。ヘンリーさんが遭遇したこの危機、そして、このように特別な場所。さらに、このような独特の雰囲気を持つ老婆が登場したことで、おそらく彼を救いうるであろうなにか特別な方法があるに違いないと思われた。

 この小さな老婆は口に含んでいたビンロウの汁を囲炉裏に向かってペッと吐き出し、おもむろに入り口のあたりから外を見回すと、一言も発することなく起ち上がった。彼女はとても小さく、その身の丈は四尺を超えないほど小さく見えたのであった。

 老婆は進み出てくると、まるで鶏の脚のように黒く皺くちゃになった指でヘンリーさんのまぶたを開き、おもむろに眼球を観察している。ヘンリーさんの瞳孔はすでに開きかけており、眼球の色つやも失われてきているようで、生気が全くない。彼の呼吸はさらに弱くなってきている。

 観察を終えた老婆はえっちらおっちらと自分の草屋に戻り、煙で燻されてすっかり黒く変色した壁に掛けてある、だがそれ以上に黒光りする竹筒をひょいと取り上げた。その竹筒はおよそ一尺ほどの長さがあり、切り口の太さは碗ほどはあった。老婆はその竹筒に手を突っ込んで、がさごそとまさぐって何かを捜すことしばらく、やがて、形を保っているニワトリの卵の殻を取り出して、竹の節の下に置いた。


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