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シャン州をさまよった女流作家 曾焔の伝奇小説 藍色的枸閙花(ゴウナオの青い花)(7)

 
   
 だが私はこのアカ族男性がなにかと騒ぎ立てることに苛つきを覚え始めていて、つい、彼の方を見た。よく見てみると、彼は片手で戻ってこいという動作をしながら、だがもう一方の手は口と鼻を塞いでいた。そしてこのとき、元々彼が頭にかぶっていたはずのタオルが、このときは口のあたりに巻かれていることにやっと気付いたのであった。その直後、私は頭を強く殴られたような衝撃を感じた。

 私はこのときようやく、彼がさっきから言わんとしていることの真意がわかったのである。つまり、この花の香りは有毒なのだ。

 そう考えていたところ、やはりというか、彼は危険を顧みずに私たちのそばまで一旦は駆け寄ってきて、ヘンリーさんの脇にまとまって生えている腰の高さぐらいの植物を指さし、それがまるで蛇や蠍の類であるかのような奇声を発し、またすぐさまそこを飛ぶように引き上げていった。

 その植物の花はお椀の口ぐらいの大きさで、ひらひらと薄い花びらはきらめくような青色をしている。たしかにこれは滅多に見ることのない珍しい植物に違いない。その美しさは見る者を震えさせ、美しいだけでなく、妖艶な邪気を放っていて、この花を眼にした者ならば誰しもがこの花を摘みたいと思うことであろう。実際、ある女子学生がこの花をすでに摘んでいて、彼女はまさにその花の香りを味わうべく、その花を自らの鼻に近付けようとしているところであった。

 その花の香りは蜜のごとく甘く芳しい。しかし、その香りは猛毒なのである。

「すぐにその花を捨てて!」私は叫んだ。

 彼女たちは私の声に驚いて両手に美しくきらめくその花を投げ捨てた。恐怖と疑問が入り交じった表情で、先ほどから慌てているアカ族の男性をじっと見つめている。

 男子生徒たちはヘンリーさんを抱き起こし、私たちはみなすぐさまこの峡谷を出て行くことにした。

 あのアカ族の男性もまた、まるでこの責任が自分にあるかのように、また、私たちが最後までこの問題に気付かなかったことはあまり気にせず、ただ、心配して私たちを引率して脱出を手伝ってくれたのだった。

 ヘンリーさんがこの謎の花の毒に当てられてしまった。そして、私たちの文明が及ばないこの密林の中では、アカ族だけがこの解毒の方法を知っているはずであった。私たちは自らできることは何もないことを覚り、二度とこの男性を疑うことなく、ただ彼と共に歩いたのである。

 現代文明の最先端を走るアメリカからやってきた新聞記者のヘンリーさんは、この山奥の山岳民族にすべてを委ねてその一命を救われようとしている。その彼は今、一体どんな気持ちであろうか。私たちは知る由もない。

 ヘンリーさんの体はがっしりとして厳つく、意識を失ったあとは、さらに石のように重くなっていた。力自慢の男子学生でさえ、数名がかりで、しかも代わる代わる彼を抱えていた。そしてみなは一言も発することなく、粛々と前を向いて歩んでいた。

 大変な思いをして歩き続けること小一時間、眼前に広がる丘の上にアカ族がまとまって住んでいる山塞が見えた。アカ族の草屋は低くて小さいが、さらにここは人家もそれほど多くはなく、十戸ほどの草屋がぽつぽつと疏らに建っているだけだった。

 山塞に入って真っ先に私たちを出迎えたのは、十数匹の大小さまざまな放し飼いの犬たちであった。アカ族にとっての犬とは、必ずしも番犬ではなく、食用として飼われていることが多いのであった。彼らは山から掘り起こしてきた芋のような植物の根を茹でて犬に与えるが、そのせいか、これらの犬たちはみな引き締まった体をしていた。



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