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シャン州をさまよった女流作家 曾焔の伝奇小説 藍色的枸閙花(ゴウナオの青い花)(5)

 
 私たちは緊張で思わず身が引き締まってきた。

 だが、機転の利く男子学生が一人いて、身振り手振りでそのアカ族の男性に、私たちをその場へ連れて行ってくれるように訴えたのであった。

「そうそう。あなたが、、、私たちを、、、連れて、、、行く!」

相手が言い終わるのを待たず、男子生徒たちは、まるで彼を担がんばかりにせっついて先へと急いだ。

 そして私たちもそれに続いた。

 彼が私たちを連れてひととおり歩くと、眼の前に峡谷が見えてきた。その峡谷は樹木が深く生い茂っていて、地面には花や藤の蔓草などがびっしりと生えている。どことなくひっそりとしていて静寂に覆われている。

 その峡谷が見えたとき、そのアカ族の男性の歩みがぴたりと止まり、前へと進まなくなった。彼の表情には恐怖と不安がもたげているのがわかる。彼はその峡谷を指さすと、また例によって通じない言葉でなにやら話し始めている。だがその様子から、ここから先へ進むことを彼がためらっていることが伝わってきた。

 樹木が生い茂っているその峡谷を見る限り、そこが立ち入りになんの遠慮もいらない安全な場所であることは明かであった。だが彼の恐怖心が私たちにも感染してきていたのか、私たちもなにやら恐ろしくなってきたのだった。みなが息を殺していると、周囲の様子は私たちを恐怖で圧倒している。ある種、そこいら中に危険がべったりと埋め込まれているような感じがしてきて、その警戒心から私たちの間に寒々とした空気が流れ出している。

 まさかこの峡谷に人食い豹が出るのだろうか。それとも人間の丸呑みにするニシキヘビの類が潜んでいるのか。

 もっとも、もしそうならば、彼とて私たちを連れてくるはずがない。だが、私たちにしても全員が束になったところで、こうした毒蛇やら猛獣やらに立ち向かう術もないのであった。

 みなは困惑して顔を見合わせることひとしきり、学生たちの眼は徐々に私の方に集まってきて、私に方針決定を促しているようなのであった。

 ここで行くの退くのと議論していたところで、問題は一向に解決しないことは事実であった。私が思うに、ここはアカ族たちが何らかの迷信で立ち入ることを恐れている場所か何かに違いないと考えた。私はそう判断した上で学生たちに言った。

「いいわ。私たちが入っていって確かめてみましょう」

 先ほどから勢いづいている男子生徒たちが先鋒を務める。元々は歩くときの杖にしていた木の枝や竹の棒を両手で構え持って、いまはそれを護身用の武器としている。

 彼らを先頭にして、私は女子生徒たちを引率してその後に続く。みな周囲を警戒しながら進んでいく。

 そしてある場所まで来たとき、アカ族の男性が慌てて私たちを押し止めた。

 だが私たちがそれを相手にせずさらに前に進もうとするのを見ると、身体中を動かしてなにやら叫び声を上げ、頭を左右に強く振って両手をばたばたと動かした。かなり焦っているのがわかる。

 私たちはそれに構わず前へ前へと進んでいった。

 そのアカ族の男性はすっかり困り切っている様子で、息はすっかり乱れてしまい、ほとんど喘ぎ声のようになっているが、やがてどうしようもないことがわかると諦めて喚くのをやめた。彼はびくびくしながら私たちと共に歩むこと数歩、だがまた何かに怯えてすぐに後ろに戻ってしまう。彼は覚ったのか、諦めてここに一人残ることにしたようであった。


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