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シャン州をさまよった女流作家 曾焔の伝奇小説 藍色的枸閙花(ゴウナオの青い花)(3)

 
 おそらく彼は浴槽で体を洗うのが習慣になっているのだろうか。

「すいません。その水瓶は浴槽ではありませんのよ」

私はドラム缶の方を指さすと、このままでは失礼になると思ったし、さらにいえばこちらが気恥ずかしくもあり、そのままそそくさと水浴び小屋を出た。

 外人さんは「おお」と一声上げてすぐにそこから抜け出したかと思うと、即座に水を溜めてあるドラム缶に飛び込んだ。このドラム缶は寸法も大きく彼の体にはもってこいなので、彼はここで気持ちよく入浴を続けた。そしてこのことはまた子供たちが大笑いするタネとなり、みな背中を曲げて笑い転げていた。

 もちろん、こんなふうに使われた以上、ドラム缶の水はだいぶ減ってしまった。この日、我が家は親子共に水浴びをすることができないのは当然であった。

 だがこうした出来事はおかしくもあり、また我が家の雰囲気を大いに和ませてくれた。

 そもそもどうしようもないことではないか。彼を責めることはできまい。このアメリカからやってきた外人さんにすれば、タイ・ビルマ国境地帯という開発が遅れた地域の人々が、浴槽で入浴しないことなど知る由もないだろう。人々はみな水を張った桶などの横で、ひしゃくで水を汲みながら、それを頭の上から垂らして水浴びをするのだ。これはいわゆる普通の入浴ではなく、「淋浴」と呼ぶやり方だ。

 そうこうして、大騒ぎの一大事となってしまった彼の入浴はやっと終わり、出て来た彼は服を着て、すでに我が家の居間で寛いでいた。私たちが彼の中国語を聞いていると、むしろこのまま彼を引き留めて晩ご飯をご馳走したくなってきた。もちろん、彼は快く招待を受けてくれたのであった。

 彼はいろいろと話してくれた。彼の名はヘンリーさん。グローブアンドメール紙極東支局に所属する新聞記者だった。彼は台北と香港で長い間勤務してきたし、最近は中国大陸へも行ったらしい。その縁で、私たちと彼との間には、さまざまな見解や見方において相通じるものがあり、これがまた私たちの間の好感をいや増していったのだった。

 日頃は得難い外国人の賓客である。私は特に心を込めていくつかの料理を作って彼をもてなした。ヘンリーさんは豪放磊落で、あまり細かいことを気にすることがなく、何かに付け度量が大きいのであった。それに彼は箸の使い方もうまく、たくさんの食べ物を恙なく食べ、そうしている間も饒舌であり続けた。主婦としての私が思うに、こうして料理をしっかり味わいながら、気持ちよくたくさん食べてくれるお客さんはそれだけで嬉しい存在であった。

 食事が終わり、茶を飲みながらあれこれと四方山話に花が咲いていたときのこと、ヘンリーさんがいきなり入浴の話題を切り出した。

「タイの入浴方法は非常に遅れています。だって、ドラム缶を使って入浴するなんて、とても不便ではありませんか」

 私はそれを聞いて笑い出してしまった。

「違いますよヘンリーさん。あなたの使い方が間違っているのです。タイ人たちは、ドラム缶をただ水を溜めるだけに使います。つまりですね……」


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