シャン州をさまよった女流作家 曾焔の伝奇小説 断魂辣(魂が消し飛ぶ唐辛子) (4)
私は今晩の夕食に生野菜の料理を一品加えることにした。それは、新鮮な木耳の唐辛子和えである。このあたりで採れるトマトには、茎の高さが非常に高く育つ酸味の強い品種があって、これが唐辛子と和えてつけだれを作るのにとてもよく合う。私は他の料理の下ごしらえを終えると、早速この唐辛子のつけだれを作り始めた。
まずトマトを二つ。その表面をよく火であぶって皮を剥く。例の唐辛子を五本とりわけてよく洗って刻み、トマト、生姜、ニンニクとともに搗き臼に入れてどろどろになるまで搗く。私としてはあと五本入れたかったのだが、夫の楊林は辛すぎる料理が苦手であり、そんな料理を食べたあとには私を罵ることが目に見えていたので、しかたなく五本に留めたのであった。さらに、細かく刻んだ葱をこのペーストに加え、胡椒を振り、うまみ調味料と塩、さらに醤油を加えてよく混ぜる。唐辛子のつけだれはついに完成した。
私はこの唐辛子のつけだれを、真っ白な磁器の皿に盛りつけてみた。美しい色の対比は見事なほどに鮮やかで、皿の白と唐辛子の赤、そしてわずかに覗く翡翠色の刻み葱は本当に食欲をそそるのである。見ているだけで心が疼いてきて、私は急いで木耳を洗った。
そして、たった今洗ったばかりの木耳を湯通ししたのち、緑が鮮やかなレタスを底に敷き詰めた大きな白い皿に盛りつけた。テーブルの上に置いて自らの作品を陶然と眺めているが、それはもうすぐにでも手を出したくなるようなできばえである。
私はやはり我慢できなくなって、つい箸を延ばして木耳を一切れつまみ、唐辛子のつけだれに浸けた。辛くてさくさくとした歯ごたえと、その爽やかな美味を想像しているうちに口の中が唾液でいっぱいになっていく。思わず堪えきれなくなってそれを口の中へと放り込んだのであった。
そして唐辛子のつけだれに浸けたその木耳を口の中に放り込んですぐ、私の口の中には電撃にも似た感覚が走った。その電撃は味蕾に伝わり、すぐさま私の身体全体に響き渡り、やがてあらゆる細胞、毛穴の一つ一つにまで入り込んだ。全身が痙攣するかのような感覚で、私は思わず昏倒しそうになった。
どのように吐き出してよいものかもわからない。私は両手で頭髪をかきむしりっては引っ張り、力一杯耳を揉んだ。その後一時間も過ぎているのに、私はまだ頭を振り、手足をばたつかせている。眼や鼻は、位置が入れ替わってしまうのではないかと思うぐらい皺くちゃになっている。私がこうして狼狽する様子はきっと、先ほどアカ族のお婆さんが、私の前で演じたあのさまよりも、さらに滑稽で言葉に出せない苦しみを見事に表現していたに違いない。
この人生で、私はこのような恐るべき辛さを初めて味わった。これはまさしく、猛毒と形容してよいほどの辛さであった。
私はこのような激辛による突然の攻撃に思わず呆然としていた。そして、この美しく盛りつけられた唐辛子のつけだれが、とてつもなく恐ろしいものに見えてきたのであった。私の舌はまだ固まったように痺れた唇の上に乗っかっており、そのまま元の状態に戻っていないのである。
まったくこれは、なんという恐るべき唐辛子なのであろうか。窒息するほどの強烈な辛さで息をもつけなくなるようである。
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